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【民事執行法】動産執行・担保権の実行としての強制競売

少額訴訟債権執行
少額訴訟に係る債務名義に基づき、その債務名義を作成した簡易裁判所裁判所書記官に債権執行を認めること。
→金銭以外の債権を差押えることはできない。
→以下の場合に債務名義となる。
少額訴訟における確定判決
②仮執行の宣言を付した少額訴訟判決
少額訴訟における訴訟費用又は和解の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分
少額訴訟における和解又は認諾の調書
少額訴訟における民事訴訟法275条の2第一項の規定による和解に代わる決定

→換価手続は債権者の直接取立、供託された弁済金の交付によりおこなう。
→転付命令、譲渡命令、売却命令、管理命令、供託された場合の配当は認められない。これらの手続をとるためには、地方裁判所への移行が必要となる。
→以下の場合は地方裁判所へ移行する。
①債権者が転付命令等を求め移行の申し立てをした場合
②供託された金銭について配当を実施すべき場合
③執行裁判所が相当と認める場合

動産執行
→債務者の所有する動産を差押え、これを換価して債権者の満足に充てる執行方法
→動産執行の対象となる動産は下記
①動産
②登記できない土地の定着物
③土地から分離する前の天然果実で一ヶ月以内に収穫することが確実なもの
④裏書きの禁止されている有価証券以外の有価証券

→動産執行は、債権者の申し立てにより執行官の目的物に対する差押えにより開始する。
→動産執行の申立書には、差押えるべき動産の所在場所を特定して記載しなければならない。
→そして、どの動産を差押えるべきなのかは、執行官が債務者の利益を考慮して判断する。
→債務者は差押物の処分が禁止されます。差押え後になされた処分行為の効力は、差押権者のみならず、その差押えに基づく執行手続に参加したすべての債権者に対抗できない。

債務者の占有する動産の差押え
→債務者の占有する動産の差押えに際しては、執行官は、債務者の住居その他債務者の占有する場所に立ち入り、金庫その他の容器について目的物を捜索することができる。
→捜索のために必要があるときは、閉鎖した戸及び金庫その他の容器を開くため必要な処分をすることができる。

債権者又は第三者の占有する動産の差押え
→債権者が占有する動産は、債権者からの提出を受けて差押えをする。
→第三者が占有する動産は、第三者が動産の提出を拒まない限り差押えることができます。第三者が提出を拒むときは、動産引渡請求権を債権執行の手続で差押える。
→差押えた動産は執行官が保管するが、相当と認められるときは債務者に保管させることができる。
→差押物について封印その他の方法で差押えの表示をしたときに限り、差押えの効力を有する。


二重差押えの禁止
→執行官は差押物又は仮差押えの執行をした動産をさらに差押えることはできない。
※不動産執行は二重開始決定が可能。債権執行は二重差押が可能。
→まだ差押えていない動産がある場合はこれを差押える。
→差押えるべき動産がないときは、その旨を明らかにして、その動産執行事件と先の動産執行事件を併合する。

超過差押えの禁止
→動産の差押えは、差押債権者の債権及び執行費用の弁済に必要な限度を超えてはならない。
→差押え後に目的物の値上がり等によって限度を越えることが明らかになったときは執行官はその越える限度において差押えを取消す必要がある。


無剰余差押えの禁止
→差押えるべき動産の売得金から手続き費用を弁済し、剰余を生じる見込みがないときは、執行官は差押えることはできない。
→差押えをした後であっても、その差押物の売得金の額が、差押債権者の債権に優先する債権の額及び手続費用の合計額以上となる見込みがないときは執行官は差押えを取消さなければならない。
→差押物について相当な方法による売却の実施をしてもなお売却の見込みがないときは、執行官はその差押物の差押えを取消すことができる。

配当
→動産執行において配当要求できるのは先取特権者と質権者である。

担保権の実行としての競売等
→債務名義を必要とせず、担保権の有する優先弁済権に内在する換価権に基づいて換価した代金から満足を得る手続。
→担保不動産競売は強制競売により、担保不動産収益執行は強制管理によりおこなう。
→強制競売又は担保権の実行としての競売の開始決定がなされた不動産について担保不動産競売の申し立てがあったときは、執行裁判所は更に担保不動産競売の開始決定をする。
→担保不動産競売、担保不動産収益執行のいずれを実行するにおいても、債務名義は不要である。
→ただし、担保権の存在を認識するための一定の文書は必要である。
①担保権の存在を証する確定判決等の謄本
②担保権の存在を証する公証人が作成した公正証書の謄本
③担保権の登記に関する登記事項証明書
④一般先取特権では、その存在を証する文書

不服申し立て
→不動産担保権の実行の場合は、担保権の消滅や不存在などの実体上の瑕疵を理由として執行抗告・執行異議の申し立てをすることができる。
→本来、執行抗告・執行異議は執行手続上の瑕疵に対する不服申し立てだが、不動産担保権の実行においては債務者保護の観点から簡易な救済方法を認めている。
→請求異議の訴えはできない。

代金納付による買受人の不動産の取得
→担保不動産競売においては、代金の納付による買受人の不動産の取得は担保権の不存在又は消滅により妨げられない。

開始決定前の保全処分
→執行裁判所は、債務者又は不動産の占有者が価格減少行為をするときは、保全処分又は公示保全処分を命ずることができる。
→開始決定後であれば、売却のための保全処分を申し立てればよいが、申し立て以前でも価格減少行為をが行われる場合にそれをやめさせることができる。
→この保全処分から3ヶ月以内に担保不動産競売の申し立てをしなければならない。

【用語 価格減少行為 公示保全処分】
価格減少行為
→不動産の価格を減少させ、又は減少させるおそれのある行為
公示保全処分
→執行官に、当該保全処分の内容を、不動産の所在する場所に公示書その他の標識を掲示する方法により公示させることを内容とする保全処分。

保全処分ができる期間
→差押権者は執行開始から代金納付までであれば可能。
→最高価買受申出人であれば、買い受けの申し出から引渡命令の執行までの間であれば可能。
→担保権者は担保不動産競売開始決定前でも買受人による代金納付までは可能。


不動産執行の規定の準用
民事執行法第44条の規定は不動産担保権の実行について、第二章第1款第2目の規定は担保不動産競売について、同款第3目の規定は担保不動産収益執行について準用される。
→担保不動産競売における売却手続において、不動産の上に存在する留置権は売却により消滅しない。
→配当表に記載された各債権者の債権又は配当の額について不服のある債権者及び債務者は、配当期日において、異議の申し出をすることができる。※配当異議の申出
 なお、ここでいう債務者には物上保証人も含まれる。

非金銭執行
→金銭債権以外の請求権の満足を目的とする強制執行のことである。

直接強制
→債務者が任意に債務を履行しない場合に、執行機関の執行行為により、債務者の意思にかかわりなく直接にその義務を実現する執行方法である。
→非金銭債権のうち、物の引渡しや明渡しの強制執行は原則として直接強制の方法による。

代替執行
→債務者以外の者によっても給付の内容を実現できる債務について、第三者にその内容を実現させ、それに要した費用を債務者に負担させる執行方法

間接強制
→債務者が債務の内容を任意に履行しない場合、一定の期間を定めて、その期間内に履行しなければ相当額の金銭を制裁金として支払わせる形で債務の履行を間接的に強制する執行方法である。

非金銭債権に関する注意点
→不作為を目的とする債務についての強制執行については代替執行の方法又は間接強制の方法によって行う。なお、代替執行の方法によることができる場合であってま間接強制が認めていないわけではない。
→直接強制や代替執行ができる債権でも、債権者の申し立てがあり、金銭債権ではない場合は間接強制をすることができる。
→金銭債権は原則として間接強制ですることはできないが、扶養義務等に係る債権の場合で以下に該当する場合以外で債権者の申し立てがあれば間接強制によりすることができる。
①債務者が支払能力を欠き弁済することができない場合
②弁済することで著しく生活が窮迫する場合

→間接強制の決定をするには、申し立てな相手方を審尋する必要がある。
→事情の変更があったときは、執行裁判所は申し立てにより間接強制の決定を変更することができる。
→間接強制決定又は間接強制決定を変更する決定には執行抗告をすることができる。

財産開始手続
→金銭債権についての強制執行等を実効性のあるものとするために、債権者の申し立てによって債務者の財産を明らかにするための制度。
→債務者の普通裁判籍を管轄する地方裁判所が執行裁判所として管轄する。
→申立権者は、金銭債権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者と、債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者である。
※仮執行の宣言を付した判決を有する金銭債権の債権者は強制執行を開始できる要件を備えているのであれば、財産開始手続の申し立てをすることができる。
→要件は下記である。
①申立権者が過去6ヶ月以内になされた強制執行又は担保権の実行での配当手続で完全な弁済を得られなかったとき
②債権者が存在を把握している債務者の財産に対する強制執行をしても完全な弁済を得られないことの疎明があったとき

→執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行の申し立てをしようとする債権者については、強制執行に一般的な開始要件を充足している必要がある。
→債務者が財産開示期日において自らの財産について陳述をした場合、債務者のプライバシー保護、債務者に圧力をかけるための濫用の防止等のために、原則として三年以内に再度財産開示手続をすることはできない。
→もっとも以下の場合は三年以内でも再実施することができる。
①債務者が当該財産開示期日において一部の財産を開示しなかったとき
②債務者が当該財産開示期日の後に新たに財産を取得したとき
③当該財産開示期日の後に債務者と使用者との雇用関係が終了したとき

→債権者の申し立てによって執行裁判所が財産開示手続実施決定をすると、期日指定と債権者・債務者の呼び出しがされる。債務者に法定代理人がある場合は法定代理人、債務者が法人である場合にあってはその代表者の呼び出しがされる。
→執行裁判所は申立人が出頭しないときでも、財産開示期日における手続を実施することができる。
→財産開示期日における手続は非公開である。

不服申し立てなど
→財産開示手続の申し立てについての裁判に対しては執行抗告をすることができる。
→財産開示手続の決定は確定しなければ効力は生じない。

三者からの情報取得
→債権者の自力による調査、債務者による財産開示だけでは執行に結び付く有益な情報を得ることが難しいため、債権者の申し立てにより債務者の不動産、給与、預貯金に関する情報提供を、執行裁判所が第三者に命令する制度が創設された。

→第三者とは以下である。

①債務者の不動産に係る情報については登記所

②債務者の給与債権に係る情報については市町村、日本年金機構

③債務者の預貯金債権等に係る情報については銀行など

 

→第三者からの情報取得手続については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所、この普通裁判籍がないときは、情報の提供を命じられるべき者の所在地を管轄する地方裁判所が執行裁判所として管轄する。

 

不動産に関する情報の取得

→次の者は債務者が所有権名義人となっている不動産について、強制執行又は担保権実行を申し立てるために必要な事項の情報を提供するよう登記所に命じることを執行裁判所に対して申し立てることができる。なお、財産開示手続と同様である。

①金銭債権について、執行力のある債務名義の正本を有する債権者

②債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債務者

 

→要件は財産開始手続の場合と同様である。執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行の申し立てをしようとする債権者については強制執行に一般的な開始要件を充足している必要がある。

 

財産開始手続の前置

→債権者は、不動産情報提供の申し立てに先行して、まず財産開示を申し立てなければならない。

→開示手続が実施された場合に、その実施期日から三年以内に限って不動産情報提供の申し立てができる。三年以内であれば申し立ての回数に制限はない。

 

情報提供の決定

→申し立てが要件を満たす場合は、執行裁判所は、法務省令で定める登記所に対して、債務者が所有権の登記名義人である土地又は建物その他これらに準ずるものとして法務省令で定めるものに対する強制執行又は担保権の実行の申し立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるものについて、情報の提供をすべき旨を命ずる。

 

送達

→債務者の不動産に係る情報の取得の申し立てを認容する決定がされたとき、当該決定を債務者に送達しなければならない。

→一般の先取特権者の申し立てによるときは、当該決定及び一般の先取特権を有することを証する文書の写しを債務者に送達しなければならない。

 

不服申し立てなど

→債務者の不動産に係る情報の取得の申し立てについての裁判に対しては執行抗告をすることができる。

→債務者の不動産に係る情報の申し立てを認容する決定は、確定しなければ効力を生じない。

 

債務者の給付債権に係る情報の取得

→以下の者は債務者の勤務先が分からないため給与債権を差押えることができない事態に対処するため、執行裁判所に対して申し立てることができる。

①扶養義務に係る定期金債権を有する債務名義を有する債権者

②人の生命身体の侵害による損害賠償請求権を有する債務名義をもつ債権者

→給与債権に関する情報を提供するのは、市町村や厚生年金保険などの実施機関である日本年金機構など

→債務者の不動産に係る情報の取得の手続な準用として財産開始手続の前置、送達、不服申し立て等がある。

 

預貯金債権等に係る情報の取得

→申立権者及び要件は財産開始手続の場合た同様である。

→なお、預貯金債権等に関する情報の取得の申し立てを却下する裁判に対しては執行抗告をすることができる。

 

 

 

 

【民事執行法】不動産執行と債権執行

 

不動産売却の実施手続
→不動産売却の準備が整い、売却条件が定められると売却が実施される。
①売却の実施方法の決定
→不動産の売却は裁判所書記官の定める方法で行われる。
→競り売り、期日入札、期間入札
②売却の実施
→不動産の買い受けをしようとする者は執行裁判所が定める額及び方法による保証金を提供しなくてはならない。
→保証金の額は売却基準価額の二割が原則である。
→保証金は買い受け後に代金に充当される。買い受けに成功しなかった場合は買い受け希望者に返還される。
→なお、買い受け人になったにもかかわらず代金を納付しない場合は売却許可決定はその効力を失い、買い受け人は保証金の返還を請求できなくなる。
③売却許可決定
→執行官による売却の実施後、執行裁判所は、売却決定期日を開き、売却の許可又は不許可を言い渡す。
→売却の許可決定にせよ、不許可の決定にせよ、執行抗告をすることができる。
→強制競売で数個の不動産を売却し、その一つで各債権者の債権額及び執行費用の全部を弁済できる見込みがある場合は、執行裁判所は他の不動産について売却許可決定を留保しなくてはならない。
④代金納付
→売却許可決定が確定した場合は、買受人は裁判所書記官の定める期限までに代金を裁判所書記官に納付しなければならない。
→保証金は買い受け後に代金に充当される。
→買受人になったにもかかわらず代金を納付しない場合は売却許可決定はその効力を失い、買受人は保証金の返還を請求できなくなる。
→買受人は代金納付の時に不動産を取得する。
裁判所書記官は買受人のために、所有権移転登記、削除になった権利の登記の抹消、差押えや仮差押えの登記の抹消などを職権で嘱託する。
→買受人が代金を納付しない場合は、次順位買受人が売却許可を申し出ることができる。
→なお、上記の申し出がない場合、又はこの者に不許可決定が確定した場合は、裁判所は職権で再売却を行う。当事者に再売却の申立権はない。
→買受人及び買受人から当該不動産の上に抵当権の設定を受けようとする者が、代金の納付の時までに申し出たときは、登記の嘱託は、登記の申請の代理を業とすることができる者で申出人が指定するものに嘱託情報を提供して登記所に提供させる方法によってしなくてはならない。すると嘱託情報の提供を受けた者の申請により、所有権移転登記と連件での所有権移転登記をすることができる。


売却のための保全処分など
→執行裁判所は、債務者又は不動産の占有者が価格減少行為をするときは保全処分又は公示保全処分を命ずることができる。
→強制競売の開始決定の前にはすることができない。
保全処分ができる期間は差押権者は執行開始から代金納付までにすることができる。最高価格買受申出人又は買受人は買い受けの申し出から引渡命令の執行までの間にすることができる。

【用語 公示保全処分】
執行官に、当該保全処分の内容を、不動産の所在する場所に公示書その他の標識を掲示する方法により公示させることを内容とする保全処分。

引渡命令
→執行裁判所は代金を納付した買受人の申し立てにより、債務者又は不動産の占有者に対して不動産を買受人に引き渡すべきことを命ずることができる。これを引渡命令という。
→引渡命令は買受人が自己の取得した不動産を債務者、その承継人、権限なく占有している第三者に対して自己に引き渡すよう命ずる決定で債務名義となる。
→この申し立てに対する裁判は執行抗告をすることができる。


配当等
→買受人が代金を納付すると、最後の段階である債権者が満足を受ける段階となる。
→その手続には配当表に基づく配当と、売却代金の交付計算書による弁済金の交付がある。
→売却代金の配当と弁済金の交付を併せて配当等という。

弁済金の交付
→債権者が一人である場合や債権者が二人以上であっても売却代金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる場合は、執行裁判所は売却代金の交付計算書を作成して、債権者に弁済金を交付し、剰余金は債務者に交付する。

配当の実施
→債務者が二人以上で売却代金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができない場合は執行裁判所は配当表に基づいて配当を実施しなくてはならない。

配当を受けることができる債権者
①差押債権者
→配当要求の終期までに強制競売又は一般の先取特権の実行として競売の申し立てをして開始決定を受けた債権者は配当等を受けるために自ら強制競売等を申し立てているので配当等を受けることができる。

②配当要求の終期までに配当要求をした債権者
→執行力のある債務名義の正本を有する債権者
→差押えの登記後に登記された仮差押債権者
民事執行法181条1項各号に掲げる文書により一般の先取特権を有することを証した債権者

③差押えの登記前に登記された仮差押債権者
→仮差押えの執行は売却によって当然に効力を失うが、差押えの登記前に仮差押えの執行がなされていることは登記記録によって執行裁判所に明らかなため、配当要求をするまでもなく当然に配当等を受けることができる。

④差押えの登記前に登記された担保権者
→差押えの登記前に登記された先取特権、質権又は抵当権は売却により消滅するのが原則であるが、担保権の登記を経由していることは、登記記録によって執行裁判所に明らかなので自ら競売の申し立てや配当供給をするまでもなく、当然に配当等を受けることができる。
→配当の額は供託される。

配当表の作成
→配当表は裁判所書記官が配当期日に作成する。各債権者の債権の元本や利息等についての配当の順位と額は配当期日において、全債権者の合意がない限りは執行裁判所が実体法に基づいて定める。
→全債権者の合意があればその合意内容を配当表に記載し、そうでなければ執行裁判所が定めた内容を配当表に記載する。
→配当期日には、各債権者、債務者が呼び出され、必要な審尋や書証の取り調べをすることができる。

配当異議の申し出
→配当表に記載された各債権者の債権又は配当の額について不服のある債権者及び債務者配当期日において配当異議の申し出をすることができる。
→配当異議を完結させるためには次の訴えを一定期間にしないときは配当異議を取り下げたとみなされる。
①債権者
配当異議の訴えをする。
②債務者
相手方が債務名義をもっていれば請求異議の訴え、もっていなければ配当異議の訴えをする。

強制管理
→債務者所有の不動産から生じる果実の収取権を執行裁判所の選任する管理人に委ね、そこから得られた収益をもって債権の満足にあてる執行方法。
→強制管理は債権者の申し立てによって開始される。申し立てを受けた執行裁判所は強制管理の開始決定をするに際して不動産の差押えを宣言するとともに、債務者に対して収益処分の禁止、および債務者に給付をする義務を負う者に対して給付の目的物を管理人に交付することを命じる。
→給付義務者に対する開始決定の効力は、開始決定が当該給付義務者に送達されたときに生じる。
天然果実は差押えの効力発生後に収穫すべきものに限られるが、法定果実は差押えの効力発生後に弁済金が到来したものだけでなく、すでに弁済期が到来しているがまだ取り立てなどをしていない未払いなものを含む。
→執行裁判所は強制管理の開始決定と同時に管理人を選任しなければならない。管理人の資格に制限はなく、自然人のみならず、銀行や信託会社も管理人になることができる。
→管理人は不動産の管理・収益の収取や換価ができる。また、管理人は債務者の占有を解いて自らこれを占有することができる。
→ただし、不動産そのものを処分することはできない。

債権執行
→債務者が第三者に対して有する債権を差し押さえて行う強制執行である。
→債権執行は債権者の申し立てにより、執行裁判所の差押命令により開始する。
→債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が専属管轄を有する。
→執行裁判所は差押命令を発するに際して、債務者及び第三債務者に対する審尋をしない。
→差押命令は債務者及び第三債務者に送達され、差押えの効力は差押えの命令が第三債務者に送達されたきに生じる。
→なお、金銭債権に対する強制執行自体は執行裁判所の差押命令により開始する。
→差押債権者の申し立てがあるときは、裁判所書記官は差押命令を送達するに際して第三債務者に対して差押命令の送達の日から二週間以内に差押えに係る債権の存否その他一定の事項について陳述すべき旨を催告しなければならない。

債権差押えの効力
→執行裁判所は差押命令において、債務者に対して債権の取り立てその他の処分の禁止と第三債務者に対して債務者への弁済の禁止をしなければならない。
→上記の効力は差押命令が第三債務者に送達されたときに生じる。

差押の範囲
→執行債権の額が被差押債権の額を下回る場合でも、被差押債権の全部につき差押命令を発することができる。
→執行裁判所は被差押債権の額が執行債権と執行費用の合計額を越える場合は他の債権を差押えることはできない。

二重差押え
→すでに差押え又は仮差押えがなされている金銭債権に対してさらに差押えの申し立てがあった場合、執行裁判所は重ねて差押命令を発することができる。
→債権の一部が差押えられて、又は仮差押えの執行を受けた場合において、その残余の部分を超えて差押命令が発せられたときは各差押え又は仮差押えの執行の効力はさの債権の全部に及ぶ。

継続的給付の差押え
→給料その他継続的給付に係る債権に対する差押えの効力は、差押え債権者の債権及び執行費用の額を限度として、差押えの後に受けるべき給付に及ぶ。

扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例
強制執行を開始するには執行債権は原則として期限が到来している必要があるが、執行債権が以下の定期金債権である場合に、その一部に債務不履行があれば定期金債権のうち確定期限の到来していないものも執行債権として債権執行を開始することができる。
①夫婦間の協力義務や扶養義務
②婚姻費用の分担義務
③子の監護に関する義務
④親族間の扶養義務

→なお、この特例によって差押えることができる被差押債権は、その確定期限の到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付にかかる債権に限られる。
→給料などの継続的給付にかかる債権の差押えの範囲は原則たして4分の1までだが、扶養義務等に係る定期金債権では2分の1に拡張されている。また、金銭債権は直接強制により執行されるが間接強制でも使える。

差押禁止債権
→次の債権は4分の1までしか差押えることができない。
①債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
②給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
③退職手当及びその性質を有する給与に係る債権

→執行裁判所は、申し立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部もしくは一部を取り消し、又は差押えてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。
→これらの変更がされた後、事情の変更があったときら執行裁判所は申し立てによりさらにこの変更をかえることができる。
→差押禁止の範囲を変更することができるが、債務者がその制度を知らずに活用されなかっため、裁判所書記官は差押命令を送達するに際して債務者に差押命令の取り消しができる旨を教示しなければならない。

 

債権者の満足

①取り立て

→債務者の有する定期預金を差押えた債権者は差押えが債務者に送達された日から一週間を経過したときは、執行債権額及び執行費用の額の範囲で債務者の有する定期預金を取り立てることができる。

→なお、被差押債権が差押禁止債権である場合は一週間ではなく四週間となる。

 

②取立訴訟

→第三債務者が債権の取り立てに応じない場合は、差押債権者は第三債務者を被告として取立訴訟を提起することができる。

→ある債権者が金銭債権の一部を差押えた場合において、その残部の部分を超えて他の債権者が差押えをしたときは、いずれの差押債権者も取立訴訟を提起することができないわけではない。

 受訴裁判所は第三債務者の申し立てにより、他の債権者で訴状の送達の時までにその債権を差押えたものに対し、共同訴訟人として原告に参加するよう命じることができる。

 

③転付命令

→被差押債権を券面額で差押債権者に移転する命令のこと。譲渡制限特約付きの債権も対象たなる。

→転付命令は債務者及び第三債務者に送達され、それが確定すると、被差押債権が債務者から差押債権者に移転し、執行債権の弁済という効力が生じる。

→転付命令の第三債務者への送達前に、他の債権者が、差押えや仮差押えの執行、配当要求をした場合は転付命令な効力は生じない。

→差押命令及び転付命令が確定した場合においては、差押債権者の債権及び執行費用は転付命令に係る金銭債権が存在する限り、その券面額で転付命令が第三債務者に送達されたときに弁済されたものとみなされる。

→転付命令に係る債権が存在しなかったときは弁済の効力は生じない。一方、存在するのであれば実際の支払の有無にかかわらず弁済されたものとみなされる。

 

【コラム 供託】

第三債務者は差押えに係る金銭債権の金額に相当する金額を債務の履行地の供託所に供託することができる。

 

④配当

→債権執行において配当要求ができるのは、執行力のある債務名義の正本を有する債権者と文書で証明した先取特権者である。

 

 

 

 

 

 

【民事訴訟法】裁判によらない訴訟の完結、控訴・再審、手形訴訟

訴えの取り下げ
→原告の審判申し立ての撤回を内容とする裁判所に対する訴訟行為
→取り下げ要件は下記となる。
①訴えの取り下げは終局判決が確定するまでにすることができる。
→すなわち、言渡し後でも確定する前であれば訴えの取り下げは可能である。また、上級審での訴えの取り下げも可能であり、請求の一部のみの取り下げも可能である。
→通常共同訴訟の一人から、又は一人に対する訴えの取り下げも一部取り下げとして可能である。
→類似必要的共同訴訟の場合は、共同訴訟人1人が単独で取り下げることはできるが、固有必要的共同訴訟の場合は全員が共同で取り下げなければ効力が生じない。

②訴えの取り下げを単独で行うには訴訟能力が必要
→すなわち、被保佐人や被補助人が訴えを取り下げるためには、保佐人や補助人による特別の授権を要する

【コラム 被保佐人や被補助人と裁判】
被保佐人は基本的に裁判行為に関しては保佐人
の同意を要する。裁判をはじめたり、取下げをも含む。ただし、応訴をするには同意を要しない。

③訴えの取下げは、被告が本案につき準備書面を提出し、弁論準備手続で申述し、又は口頭弁論期日に弁論をした後は、被告の同意が必要
→なお、被告が第一回の口頭弁論期日に出頭した場合であっても、答弁書その他の準備書面を提出せず、かつ弁論もせずに退席したときには、訴えの取下げに被告の同意は不要である。


訴えの取下げの手続
→原則として書面でする必要がある。
→口頭弁論、弁論準備手続、和解の期日においては口頭ですることもできる。
→相手方が出頭していなくても、上記の期日には口頭での訴えの取下げをすることができる。ただし、その期日の調書の謄本を相手方に送達しなくてはならない。

訴えの取下げの効果
→訴訟は初めから係属していなかったとみなされ、訴訟は終了する。
→すでになされた終局判決は無効となり、時効の更新の効力も生じない。ただし、6ヶ月の時効の更新猶予の効力は生じる。
控訴審で訴えを取り下げた場合は、第一審の判決も含めて効力を失う。一方、控訴を取り下げた場合は第一審の判決が確定することになる。
→本案の終局判決後に訴えを取り下げた場合、原告は同一の訴えについて再訴が禁止される。
→却下判決の取り下げの場合は再訴は禁止されていない。

訴えの取り下げ擬制
→次の場合には訴えの取下げが擬制される。
①当事者双方が、口頭弁論もしくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論もしくは弁論準備手続における申述をしないで退廷もしくは退席をした場合において、1ヶ月以内に期日指定の申し立てをしないとき
②当事者双方が連続して二回、口頭弁論もしくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論もしくは弁論準備手続における申述をしないで退廷もしくは退席をしたとき。

請求の放棄と認諾
→前者は原告が請求に理由がないことを自認する裁判所に対する意思表示
→後者は被告が請求に理由があることを認める裁判所に対する意思表示
→本案判決と同じく、その請求に関する訴訟を終了させる効果をもつので、その前提要件として訴訟要件を具備する必要がある。
→請求の放棄や認諾に条件を付けることはできない。
→相手方の同意は必要なし。
→請求の放棄や認諾は、口頭弁論期日・弁論準備手続期日・和解の期日においてする。
→請求の放棄や認諾をする旨の書面を提出した当事者が、期日に出頭しない場合、その旨の陳述をしたものとみなすことができる。
→なお、弁論準備手続の期日における手続は、当事者の一方がその期日に出頭した場合には、電話会議システムの方法ですることもできる。※訴えの取下げや和解も同様である。
→請求の放棄や認諾が記載された調書が成立すると訴訟は終了する。放棄調書は請求棄却と同一の効果を生じ、認諾調書は請求認容の確定判決と同一の効果を生じる。
→訴えの取下げがあった部分については初めから係属していなかったものとみなされる一方で請求の放棄がされて調書に記載されるた、その記載は確定判決た同一の効果を生じるため、訴訟係属が消滅するわけではない。


訴訟上の和解
→訴訟係属中に当事者が訴訟物をめぐり主張について相互に譲歩することによって訴訟を全部又は一部終了させる旨の期日における合意のこと。
→判決の言渡しの後でも確定前であれば和解をすることができる。
→裁判所は訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試みて、又は受命裁判官や受託裁判官に和解を試みさせることができる。
→裁判所又は受命裁判官、受託裁判官は当事者の共同の申し立てがあるときは、事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる。
→和解条項の定めは、口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日における告知その他相当と認める告知によって行う。
→訴訟上の和解に無効や取消原因のような瑕疵がある場合、当該和解の効力を争う当事者は、口頭弁論の期日の指定の申立をして訴訟の続行を求めることができる。
→その他、和解無効確認の訴えや請求異議の訴えを提起することもできる。
→訴訟上の和解において、提起された訴えが訴えの利益を欠くとしても訴訟上の和解は無効とはならない。一方、当事者能力のような訴訟要件は必要であるとされる。
→訴訟上の和解が調書に記載されたときは、その記載は確定判決と同一の効果を生じる。

訴え提起前の和解
→当事者が請求の趣旨及び原因並びに争いの実情を表示して、相手方の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所に和解の申立をすること。
→訴え提起前の和解は訴額に関わりなく、簡易裁判所に職分管轄がある。
→和解が不調に終わった場合、和解期日に出頭した当事者双方の申し立てがあれば、裁判所は直ちに訴訟の弁論を命じ、この場合、和解の申し立てをした者は、その申し立てをした時に訴えを提起したとみなされる。
→申立人又は相手方が、和解の期日に出頭しない場合は裁判所は和解が調わないものとみなすことができる。

和解に代わる決定
簡易裁判所では、特例として、和解に代わる決定という制度も用意されている。
→金銭の支払いの請求を目的とする訴えの場合で、被告が原告の主張した事実を争わず、その他何らの防御な方法も主張しない場合に、被告の資力その他の事情を考慮して相当であると認めるときは、原告の意見を聴いた上で、一定の決定をすることができる。
→一定の決定とは、五年以内の範囲で支払の時期の定めか分割の定めをするものであり、これと併せて、一定の場合に訴え提起後の遅延損害金を免除する定めをすることができる。
→当事者が、その決定の告知を受けた日から2週間内に異議申し立てをするとその決定は効力を失う。異議申し立てがないと、その決定は和解と同一の効果を有する。
→なお、決定や命令は相当と認める方法で告知をすることにより効力を生じる。判決の言渡しでさえ当事者の出頭は必要ない。


控訴
簡易裁判所又は地方裁判所の第一審の終局判決に対して、その取消や変更を求める第二審の事実審への上訴申し立て行為
→控訴の提起は控訴状を第一審裁判所に提出してしなければならない。
→控訴が不適法でその不備を補正することができないときは、控訴裁判所は、口頭弁論を経ないで判決で控訴を却下することができる。
→控訴を提起するには、当事者が控訴の利益をもつことが必要である。控訴の利益は本案の申し立てと判決主文を比較して、判決主文で与えられたものが本案の申し立てで求めたものより小さい場合に認められる。

【コラム 相殺の抗弁と控訴の利益】
控訴の利益は、例えば、全部認容判決を得た原告や全部棄却判決を得た被告は控訴を提起できない。一方、予備的相殺の抗弁が認められて全部棄却判決が認められて全部棄却判決を得た被告は控訴を提起することができる。
→原告の主位的請求を棄却し、予備的請求を認容した判決については、原告にも被告にも控訴の利益がある。
→予備的請求とは主位的請求が認められない場合にする請求である。

控訴審における審理
控訴審の口頭弁論は当事者が第一審判決の変更を求める限度においてなされる。したがって、第一審で収集した資料を基礎として、そこに新たに収拾された資料を加えたうえで、不当の当否が審判される。これを続審制という。
控訴審の口頭弁論は第一審の訴訟資料や証拠資料を控訴審でも利用するため、直接主義の要請から当事者は第一審における口頭弁論の結果を陳述しなければならない。
控訴審における反訴の提起は相手方の同意がある場合に限りすることができる。
→裁判所は控訴人に対して第一審判決より不利益な判決をすることはできない。
→控訴の取下げは、控訴審の終局判決があるまですることができる。この場合は相手の同意は必要がない。第一審が確定するだけだからである。ただし、控訴審における訴えの取り下げは相手方の同意を得た上で終局判決が確定するまで可能である。

附帯控訴
→被控訴人が控訴審の口頭弁論終結時までに審判の範囲を拡張し、原判決を自己に有利なように変更を求めることである。
→例えば、500万の貸金返還請求訴訟において、300万の一部認容判決がされた場合は原告は200万が不服申し立ての限度であるが、被告は500万につき附帯控訴をして、審判の範囲を拡張することができる。
→附帯控訴状は第一審裁判所か控訴裁判所に対して提出する。
→控訴の取下げや却下があった場合は附帯控訴は効力を失うが、控訴の要件を満たしていれば独立した控訴とみなされる。
→附帯控訴も、控訴審の終局判決があるまで取り下げることができ、被控訴人の同意を必要としない。

 

再審
→確定した終局判決に重大な瑕疵がある場合に、その判決の取消と事件についての再審理を求める特別の不服申し立ての制度である。
→再審には、確定判決に対する再審と命令や決定に対する再審の申し立てとして準再審がある。

 

再審開始決定
→第一段階として、まずは決定そのものの手続である。再審の訴えの提起によって再審開始手続が開始される。

→再審の訴えにはその性質に反しない限り、その審級の訴訟手続に関する規定が準用される。

また、再審の訴えの提起は、一般の訴えの提起の場合に準ずる。
→再審事由の存在が認められる場合は再審開始決定が下される。当該決定が確定した後に第二段階として本案審理手続にはいる。
→再審の適法要件が欠く場合は訴え却下決定が下される。
→再審事由の存在が認められない場合は再審棄却決定がされる。この場合、同一の事由を不服の理由として、さらに再審の訴えを提起することはできない。

→再審開始決定手続では原則として口頭弁論は開かれない。。裁判所は再審の訴えの要件を職権で調査をする。

→裁判所は再審の事由があると判断するときは再審開始決定を行うが、この場合は相手方を審尋する必要がある。

→再審の訴えを提起した当事者は不服の理由を変更することができる。

→再審開始決定がされた場合でも再審請求棄却決定がされた場合でも当事者は即時抗告をすることができる。

→なお、再審請求棄却決定が確定した場合には、同一の事由を不服の理由として、さらに再審の訴えをすることはできない。

 

本案審理手続
→裁判所は再審開始の決定が確定した場合には、不服申し立ての限度で本案の審理及び裁判をする。裁判所は、再審の請求を棄却する場合を除いて、判決を取り消した上でさらに裁判をしなければならない。
→裁判所は判決を正当とするときは、再審の請求を棄却しなければならない。

→裁判所は再審開始手続の決定が確定した場合には、不服申し立ての限度で本案の審理及び裁判をする。この手続には必要的口頭弁論の原則が適用される。

→裁判所は原確定判決を正当でないとする場合には、原確定判決を取り消して、これに代わる新たな判決を言い渡し、原確定判決を正当と判断する場合には、再審請求を棄却する。

→既判力の基準時は、再審の訴えにおける事実審の口頭弁論終結の時となる。

 

再審の要件
①対象となる判決
→再審の訴えの対象となる判決は確定した終局判決に限定される。
→審級が異なる裁判所が同一の事件についてした判決に対する再審の訴えは上級の裁判所が併せて管轄する。
→控訴棄却の判決がされた場合には、訴えについての全面的な再審理がなされているため、第一審判決に対して再審の訴えを提起する必要がなく、再審の訴えを提起することができない。

②管轄
→原確定判決を言い渡した裁判所の専属管轄に属する。

③当事者適格
原告適格として、不服申し立ての対象となる確定判決によって不利益な効力を受ける者
→被告適格として、不服申し立ての対象となる確定判決を取り消されることにより不利益を受ける者
→なお、口頭弁論終結後の承継人は再審の訴えの原告適格を有する。

④再審事由

→法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと

→法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと

→法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと

→判決の基礎となった民事若しくは刑事上の判決その他の裁判又は行政処分が後の裁判又は行政処分により変更されたこと

→判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと

→不服の申し立てに係る判決が前に確定した判決と抵触すること。

 

※次の四点は罰すべき行為について、有罪の判決もしくは過料の裁判が確定したとき、又は証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限り再審の訴えをすることができる。

→判決に関与した裁判官が事件について職務に関する罪を犯したこと。

→刑事上罰すべき他人の行為により、自白に至ったこと又は判決に影響を及ぼすべき攻撃もしくは防御の方法を提出することを妨げられたこと

→判決の証拠となった文書その他の物件が偽造又は変造されたものであったこと

→証人、鑑定人、通訳人又は宣誓した当事者若しくは法定代理人の虚偽の陳述が証拠となったこと

 

【コラム 控訴と再審】

 控訴審において事件につき本案判決をしたときは、第一審の判決に対し再審の訴えを提起することができない。

 

⑤再審期間

→確定判決後その再審事由を知った日から30日の不変期間内に提起しなければならない。

→当事者が再審事由があることを知らなかった場合にも、判決確定の日又は再審事由が判決確定後に生じたときは、その日から五年を経過すれば、もはや再審の訴えは提起することができない。

→代理権の欠缺と既判力の抵触についての再審事由については再審期間の制限はない。

 

⑥再審の補充性

→再審事由をすでに当該事件の上訴手続で主張していたか、又はその存在を知っていながら主張しなかった場合は、再審の訴えを提起することはできない。

 

準再審

→即時抗告をもって不服を申し立てることができる決定又は命令で確定したものに対しては再審の申し立てをすることができる。

→たとえば、確定した訴状却下命令に対して再審の申し立てをすることができる。

 

手形訴訟

→手形による金銭の支払いとこれに付帯する法定利率による損害賠償の支払いを求める場合に利用できる訴訟法における制度である。

→原告は手形金の支払いを請求する場合は手形訴訟を提起するか通常訴訟を提起するかを選択することができる。

→原告が手形訴訟による審理及び裁判を求めるには、その旨の申述を訴状に明記する必要がある。

→手形訴訟の原告は、口頭弁論終結に至るまで、手形訴訟を通常訴訟に移行させる旨の申述をおこなうことができ、その際に被告の同意は不要である。

→特別な事情がある場合を除き、最初の口頭弁論期日にすべての攻撃防御方法を提出し、その審理を完了しなければならない。

→手形訴訟においては証拠調べは挙証者の所持する文書についての書証に限りすることができる。

→文書の真否と手形の呈示に関する事実については当事者尋問が可能だが、証人尋問はできない。

→一般の訴訟要件を欠く場合には、訴え却下判決がなされる。そのような却下判決に対しては控訴をすることができる。

→原告の請求を認容する判決には職権で仮執行の宣言を付けなければならない。

→不服申し立てにつき、手形訴訟の終局判決に対しては控訴をすることができない。

→判決書又はそれにかわる調書の送達を受けた日から2週間以内にその判決をした裁判所に異議を申し立てることができる。

→適法な異議があった場合には、訴訟は口頭弁論終結前の状態に復し、通常手続に移行する。

→異議による通常訴訟の審理の結果、手形判決と同じ結論に達したときは、裁判所は手形訴訟の判決を認可しなければならない。

→手形判決と異なる結論となる場合又は手形判決の手続が法律に違反している場合には、裁判所は手形判決を取り消して新たな判決をすることになる。

→異議を申し立てて通常訴訟をした場合の判決については控訴することができる。

 

【民事訴訟法】訴訟費用

訴訟費用の負担

→判決により訴訟が終了した場合、訴訟費用は原則として敗訴当事者の負担となる。

→ただし、勝訴当事者が不必要な行為をした場合や訴訟を遅滞させた場合は勝訴当事者にも訴訟費用を負担させることができる。

→裁判所は事件を完結する裁判において、職権でその審級における訴訟費用の全部についてその負担の裁判をしなければならない。ただし、事情により、事件の一部又は中間の争いに関する裁判において、その費用についての負担の裁判をすることができる。

→当事者が裁判所において和解をした場合において、和解の費用や訴訟費用につき特別の定めをしなかったときは、その費用は各自が負担する。

→訴訟費用の負担の額はその負担の裁判が執行力を生じたあとに、申し立てにより、第一審裁判所の書記官が定める。

 

証拠保全などの費用

→訴え提起前の証拠収集の処分の費用は申立人の負担となる。

→証拠保全に関する費用は、訴訟費用の一部となる。

→訴訟費用の負担の裁判に対しては、独立して上訴することはできない。

 

訴訟上の救助

→訴訟の準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない者又はその支払いにより生活に著しい支障を生ずる者に対しては、裁判所は勝訴の見込みがない場合を除き、申し立てにより訴訟上の救助の決定をすることができる。

→この決定は審級ごとになされる。

 

救助の効力

→決定を受けたまののみに効力を生じる。また、裁判所は訴訟の承継人に決定で猶予した費用の支払いを命じることができる。

→あくまでも支払いの猶予であって免除ではない。

①裁判費用並びに執行官の手数料及びその職務に要する費用の支払いの猶予

②裁判所において付き添いを命じた弁護士の報酬及び費用の支払いの猶予

③訴訟の費用の担保の免除

【民事訴訟法】証拠関連まとめ②

書証
→文書に記載されている内容を裁判所が閲覧して、その意味内容を証拠資料とする証拠調べである。一般に証人尋問、当事者尋問、鑑定人などの人証より証拠力は高いとされる。

形式的証拠力
→文書に作成名義人と表示されている者と、実際にその文書を作成した者が一致していること。つまり、証拠としては、作成者の意思にもとづいてその文書が作成されたことを要する。
→書証における文書についてはその成立が真正であることを証明しなければならないが、成立の真正とは文書が作成者の意思に基づいて作成されたことを意味する。
→公文書は、方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められる場合には真正に成立したものと推定される。また、公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会することができる。
→私文書について、文書の成立の真正が争われた場合、文書の成立の真否は、筆跡又は印影の対象によっても証明することができる。また、私文書は本人又は代理人の署名か押印があれば真正に成立したものと推定される。
→文書の成立の真否について当事者が認否した場合、それは補助事実であり裁判所を拘束しない。

実質的証拠力
→真正な文書の記載内容が、要証事実の証明にどれだけ役立つかということ。文書の実質的証拠力が確定してはじめて実質的証拠力が問題となり、その有無は裁判官の自由心証に基づく。

【コラム 二重の推定】
 私文書はは署名か押印があればその真正が推定される。したがって、私文書に三文判が押印されているだけでは文書の真正を証明することができない。
 しかし、実印すなわち印鑑証明書が添附されている場合、①実印であれば本人の意思にもとづき押印されたという推定と②文書が作成者の意思に基づいて作成されたという推定の二段階でなされる。
 ①については実印は厳重に保管されるべきであるとする経験則を根拠としている。

書証の方式
①自ら文書を提出する。
②文書提出命令の申立
→文書の表示、趣旨、所持者、証明すべき事実、文書の提出義務の原因を明らかにしなければならない。ただし、表示や趣旨については曖昧でよい場合がある。
→裁判所は文書提出命令の申立を理由があると認めるときは、決定で文書の所持者に対してその提出を求めることができる。
→文書に取り調べる必要がないと認める部分又は提出の義務があると認めることができない部分があるときは、その部分を除いて提出を命じることができる。
→第三者に対して文書提出命令を出そうとする場合、その第三者を審尋しなければならない。
→文書提出命令の申立の決定に対しては即時抗告をすることができる。提出命令にも却下命令にもすることができるが、前者は文書の所持者、後者は所持者しかすることができない。

【コラム 文書提出義務】
文書提出命令の申立をする場合は文書提出義務の原因を明らかにしなければならない。次に掲げる場合は文書の所持者はその提出を拒むことができない。
→①②③までは当事者と文書の間に特別の関係がある場合に提出が義務づけられるものであり、④は一般に提出が義務づけられているものである。
①当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき
②挙証者が文書の所持者に対してその引渡し又は閲覧を求めることができるとき
③文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき
④上記以外の場合の他に、文書が次のいづれにも該当しないとき
→親族などが刑事訴追を受ける事項などが記載されている文書
→公務員の職務上の秘密に関する文書
→職務上知り得た事実で黙秘すべきもの又は技術・職業上の秘密に関する事項で黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書
→もっぱら文書の所持者の利用に供するための文書
→刑事事件に係る訴訟に関する書類など
→当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務のある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも同様である。
→さらに、相手方が当該文書の記載に関して具体的な主張をすること及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所はその事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる。つまり、挙証者にとってその書証が唯一の証拠である場合である。
→第三者が文書提出命令に従わない場合は、裁判所の決定で20万以下の過料に処せられる。

【コラム インカメラ手続】
 裁判所は上記文書提出義務④における刑事事件に係る訴訟に関する書類等以外で、文書提出義務があるかどうか判断するために必要があれば所持者に提示させることができる。
 この場合、裁判所以外の誰もその提示された文書の閲覧を開示を求めることができない。

【コラム 即時抗告】
 通常の抗告はいつでもできるが、即時抗告は裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間のうちにしなくてはならない。執行停止という強力な効果があるためである。 
 なお、抗告は上告の一種である。したがって、たとえば地裁の決定に対しては高裁に抗告をすることになるが、抗告状は地裁に提出する。


③文書の送付嘱託の申立
→文書の所持者その文書の送付を嘱託することの申立である。文書提出義務の有無に関わらず利用することができる。任意の提出を求めるためにする書証の申出であり、主に官公署に対して利用される。
→当事者が法令により文書の正本又は謄本の交付を求めることができる場合にはすることができない。
→書証に関する規定は、図面、写真、録音テープ、ビデオテープ、その他の情報を表すために作成された物件で文書でないものにも準用される。

検証
→裁判官が五感の作用で物の形状、状態を認識し、その結果を証拠資料とする。
→検証の目的の提示や送付については、書証の申出、文書提出命令、文書送付の嘱託が準用されている。
→検証にあたっては必要があれば鑑定を命じることができる。※職権でも申立でも可能
→証拠保全として検証を行う場合ら裁判所は申し立てにより検証物の提示を求めることができる。

 

証拠保全手続

→裁判所が、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情がある場合に、申し立てによって本来の証拠調べに先立って証拠調べをすることができる。

→訴訟継続前でも訴訟継続中でもできる。

→訴訟継続前であれば申立がなければできないが、訴訟継続中であれば職権で証拠保全の決定をすることができる。

→証拠保全手続で尋問した証人について、当事者が口頭弁論における尋問の申し立てをしたときは裁判所はその尋問をしなければならない。

→訴えの提起前における証拠保全の申し立ては尋問を受けるべき者もしくは文書を所持する者の居所又は検証物の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所にしなければならない。

→訴えの提起後における証拠保全の申立はその証拠を利用すべき審級の裁判所にしなければならない。ただし、最初の口頭弁論の期日が指定され、又は事件が弁論準備手続もしくは書面による準備手続に付された後口頭弁論の終結に至る間は、受訴裁判所に対してする。

→証拠保全の申立は書面で行う。

→相手方を指定できない場合でも証拠保全の申し立てをすることができる。その場合は特別代理人が選任される。

→証拠保全の決定に対しては不服を申し立てることはできないが、却下の決定には不服を申し立てることができる。

→証拠保全に関する費用は訴訟費用の一部となる。

→証拠保全の手続において尋問をした証人について、当事者が口頭弁論における尋問の申出をしたときは裁判所はその尋問をしなければならない。

 

自由心証主義

→裁判官が事実認定をする場合には口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果から裁判官の自由な心証によって行う原則である。

→弁論の全趣旨とは口頭弁論に現れた一切の資料・模様・状況などをさす。当事者の弁論内容の他に証人・当事者・代理人の態度、攻撃防御方法の提出なども含まれる。

→証拠調べの結果とは、証拠方法を取り調べて得られた証拠資料のことである。これには証拠方法については制限がなく、証拠方法を取り調べて得られた証拠をどのように評価してもよいという二つの内容がある。

→事実認定を弁論の全趣旨のみで判断することもできる。

→自由心証主義は、主要事実・間接事実・補助事実に適用される。

→当事者の一方の申出にかかる証拠を相手方に有利な事実を認定するために使うこともできる(証拠共通の原則)。

→損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果にもとづき、相当な損害額を認定することができる。

 

 

【民事訴訟法】証拠関連まとめ①

証拠法に関する用語
①証明
→事実の存否の判断について裁判官が確認した状態、又はその状態を実現するために当事者が証拠を提出する行為
②疎明
→証明の程度には至らないが一応確からしいという程度の蓋然性が認められる状態、又はその状態を実現するために当事者が証拠を提出する行為
→疎明は即時に取り調べられる証拠によってしなければならない。
③本証
→自分に立証責任のある事実を証明するための証拠又はその証拠を提出する活動のこと。本証の場合は、裁判官の心証を積極的に確信に至らしめなければならない。
④反証
→相手方が証明責任を負う事実を否認するための証拠又はその証拠を提出する活動の事。反証の場合は、裁判官の心証が確信に至るのを防げば足りる。

【コラム 抗弁】
相手の主張を認めつつ、それとは矛盾しないで新たな主張をすることを抗弁という。たとえば、「同時履行の抗弁」であれば売買による引渡請求権に基づく引渡し給付を求める場合、相手方は売買契約や原告の引渡し請求権を認めつつ、代金未払いのため、同時履行の抗弁をすることができる。
→この例では引換給付判決がなされるだろう。

⑤直接証拠
→主要事実を直接証明するための証拠
→たとえば貸金返還請求における金銭消費貸借契約書がこれにあたる。
⑥間接証拠
→間接事実や補助事実を証明するための証拠
→たとえば貸金返還請求における、高価な物品を購入したという証言や明らかに契約書の筆跡が違うとする補助事実を証明する文書などである。

【コラム 証拠】
 権利義務の発生・変更・消滅に関する事実を主要事実、主要事実の存否を推認する事実を間接事実、証拠に関する事実を補助事実という。
 なお、弁論主義における事実とは主要事実の とであり、自白の拘束力は主要事実にのみ生じ、間接事実や補助事実は裁判所や当事者を拘束しない。

⑦証拠方法
→証拠調べの対象となる証人や文書
⑧証拠資料
→証拠資料によって得られた、証人の証言や文書に記載されている内容のことである。

【コラム 資料】
弁論により得られた資料を訴訟資料、証拠調べによって得られた資料を証拠資料という。併せて裁判資料という。

⑨証拠能力
→証拠方法として用いることができるということで、民事手続では原則として証拠能力に制限はない。
⑩証拠力
→証拠資料が事実認定に役立つ程度の事。証明力ともいう。


証拠調べなど
→訴訟における証明の対象として問題となるのは、裁判をするのに必要な事実、法規、及び経験則である。
→当事者が主張した事実について相手方が争う場合は、主要事実・間接事実・補助事実を問わず、原則として証拠による証明の対象となる。
→当事者がその存否を争うことによって証明が必要とされるに至った事実を要証事実という。
→裁判上の自白が成立した事実及び顕著な事実については証明が不要である。

【コラム 裁判所に顕著な事実】
たとえば同一の裁判所で破産手続開始決定があった事実など。裁判官が個人的に知っている事実は含まれない。

職権証拠調べの禁止
→弁論主義により職権証拠調べは原則としてすることができないが、以下の場合は当事者の申出がなくても、職権で行うことができる。
①管轄に関する事項
②調査の嘱託
→裁判所は必要な調査を官庁もしくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所、その他の団体に嘱託することができる。
→調査の嘱託は自然人である個人にするこたはできない。証人尋問や鑑定でおこなう。
→調査の嘱託によって得られた結果を証拠とするには、裁判所がそれを口頭弁論で提示して当事者に意見陳述の機会を与えれば足りる。当事者の援用を要しない。
③当事者尋問
→なお、弁論ではないため、ここでの陳述は自白としては認められない。
④鑑定の嘱託
→客観的な立場の機関などに嘱託するため職権証拠調べができるのであって、裁判所自らが鑑定をすることはできない。
⑤検証の際の鑑定
⑥訴訟係属中の証拠保全


証拠の申出
→証明すべき事実及びこれと証拠との関係を具体的に明示して行う必要がある。
→証拠の申出は口頭ですることもできる。
→証拠の申出は訴訟の進行状況に応じて適切な時期に提出しなければならないが、期日前や弁論準備手続においてすることができる。
→証拠の申出を裁判所は却下することができるが、それに対しては即時抗告をすることができない。
→証拠の申出の撤回は、証拠調べの開始前は自由にすることができる。開始後は相手方の同意があればすることができる。ただし、証拠調べが終了するともはや撤回することができない。
→なお、証人尋問が実施される前に当事者が当該証人尋問の申出を撤回した場合において、その当事者がその審級において、同一の証人について証人尋問の申出をすることは許されないという規定はない。

【コラム 証拠の採否】
裁判所は当事者が申し出た証拠で必要ないと認めるものは取り調べを要しません。つまり、証拠調べを実施するかどうかは裁判所の裁量である。裁判官は証拠によって心証を形成するが、どの証拠によって心証を形成するかは裁判所の裁量となる。

証拠調べ
→証拠調べの期日は、急速を要する場合を除き、申立人及び相手方を呼び出さなければならない。
→なお、当事者が呼び出しに応じずに期日に出頭しない場合においても証拠調べをすることができる。

【コラム 集中証拠調べ】
証人及び当事者本人の尋問はできる限り、争点及び証拠の整理が終了した後に集中して行う。
→一般的には下記の流れとなる。
①第一回口頭弁論の実施
→今後の方針などを確認
②争点・証拠の整理手続
→争点などの確認
③後続の口頭弁論の実施
→証人尋問など

人証
→証人尋問、当事者尋問、鑑定がある。
→証人尋問は証人を証拠方法として尋問する証拠調べのことである。
→当事者尋問は当事者本人やその法定代理人又は法人の代表者を証拠調べの証拠方法として尋問する証拠調べのことである。
→鑑定とは、特別の学識経験を有する鑑定人に、その学識経験に基づく判断や意見を裁判所に報告させる証拠調べの事

証人尋問
→証人とは過去の事実や状態について認識した内容を陳述する者のことである。そして、尋問によりこの陳述を求める手続が証人尋問である。なお、当事者の申出によるものであり裁判所の職権ではすることができない。
→裁判所は特別の定めがある場合を除き、何人でも証人として尋問することができる。証人能力はすべての人に認められている。
→もっとも当事者本人と法定代理人は当事者尋問の手続によるので、その訴訟においては証人になることはできない。
→公務員な尋問の規定においては、公務員又は公務員であった者を証人として職務上の秘密について尋問する場合には、裁判所は当該監督官庁の証人を得なければならない。この証人は公共の利害を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある場合を除き、拒むことができない。

【コラム 補助参加人の証人尋問】
証人能力は原則として制限がないため、当事者及び法定代理人以外のすべての者を証人として尋問することができる。したがって、補助参加人を証人として尋問することができる。
→補助参加人とは判決の結果に利害関係がある者であり、裁判所の許可により訴訟参加することができる。

【用語 訴訟参加】
訴訟係属中に第三者がその訴訟に参加すること。下記の形態がある。
①補助参加
→判決の結果に利害関係がある者の訴訟参加である。口頭弁論で陳述することができる。
→参加人は当事者であるため、判決の名宛人ではないため既判力は生じない
→利害関係は法律上の利害関係であることを要する。
→補助参加は参加の趣旨と理由を明らかにして補助参加により訴訟行為をすべき裁判所にしなければならない。
→補助参加の申出は補助参加人としてできる訴訟行為とともにすることができる。
→当事者は参加に関して異議を述べることができ、その場合は裁判所は補助参加の許否を決定により裁判をする。
→上記に関しては即時抗告をすることができる。この場合、補助参加人は参加の理由を疎明しなくてはならない。
→当事者が異議を述べることがなく、弁論や弁論準備手続で申述した後は異議を述べることができなくなる。
②補佐人
→当事者の陳述を補助する者。当事者とともに出頭するには裁判所の許可を要するがいつでま取り消すことができる。

手続の流れ
→証人尋問の申出は証人を指定し、かつ尋問に要する見込みの時間を明らかにしてしなければならない。
→証人尋問は、証人の出頭⇒宣誓⇒尋問に対する証言
→証人尋問の申し出をした当事者は、証人を証人尋問の期日に出頭させるように努めなくてはならない。
→証人が正当な理由なく出頭しないときは、それによって生じた訴訟費用の負担が命じられ、かつ過料や罰金、拘留に処せられる。
→また証人には代替性がないため、裁判所は正当な理由なく出頭しない証人の勾引を命じることができる。
→証言について、証人又は証人と次に掲げる関係を有する者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれがある事項に関するときは、証人は証言を拒むことができる。証言がこれらの者の名誉を害すべき事項に関するときも同様である。
 ※配偶者、4親等内の血族、もしきは三等親内の姻族の関係にあり、又はあったこと
 ※後見人と被後見人の関係にあること
→証言を拒絶する場合はその理由を疎明しなければならない。その当否は当事者を審尋して決定で裁判するのが原則である。その裁判に関しては当事者及び証人は即時抗告をすることができる。
→証言拒絶を理由がないとする裁判が確定した後に、証人が正当な理由なく証言を拒んだ場合には、不出頭に対する制裁規定が準用される。

【コラム 証人が黙秘の義務を負っている場合】
次の場合には、証人は黙秘の義務を免除された場合を除き、証言を拒むことができる。
①公務員やそうであった者を証人として職務上の秘密について尋問するときは裁判所は当該監督官庁の証人を得なければならない。
②医師、歯科医師、薬剤師、医療品販売業者、助産師、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教関係者が職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて尋問を受けるとき
③技術又は職業の秘密に関する事項について尋問を受けるとき。


宣誓
→証人がした場合はまず宣誓させなければならない。もっとも16歳未満の者や宣誓の趣旨を理解することができない者を証人として尋問する場合は宣誓させることができない。
→また、証言拒絶権を有する証人で証言拒絶の権利を行使しないものを尋問する場合には宣誓をさせたいことができ、196条各号に掲げる関係を有する者に著しい利害関係のある事項について尋問を受けるときは宣誓を拒むことができる。
→宣誓が拒絶された場合の手続については不出頭の制裁の規定が準用されている。

証人尋問の方法
→当事者、他の当事者、裁判長の順序で行う。
それぞれ主尋問、反対尋問、補充尋問という。
裁判長が適当と認めるときは当事者の意見を聴いて、順序を変更することができる。
 なお、当事者が変更について異議を述べたときは、裁判所は決定でその異議について裁判をする。
→証人は裁判長の許可を受けたときを除き、書類に基づいて陳述をすることができない。

裁判所外における証人尋問
→裁判所は次に掲げる場合に限り、受命裁判官又は受託裁判官に裁判所の外で証人の尋問をさせることができる。
①証人が受訴裁判所に出頭する義務がないとき、又は正当な理由により出頭することができないとき。
②証人が受訴裁判所に出頭するについて不相当な費用又は時間を要するとき
③現場において証人を尋問することが事実を発見するために必要であるとき
④当事者に異議がないとき。

 

【コラム 受命裁判官と受託裁判官】

前者は裁判官複数人の合議体を構成する、ある裁判官であり、合議体より個別に受命された者である。後者は裁判事務の委託を受けた他の裁判所の裁判官である。

 

テレビ電話会議システムの利用

→裁判所は次に掲げる場合には最高裁判所規則で定めるところにより、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法によって、証人の尋問をすることができる。

①証人が遠隔の地にいるとき

②事案の性質、証人の年齢又は心身の状態、証人と当事者本人又はその法定代理人との関係その他の事情により、証人が裁判長及び当事者が証人を尋問するために在籍する場合において陳述するときは圧迫を受けて精神の平穏を著しく害するおそれがあると認められる場合であって相当と認めるとき

 

書面尋問

→裁判所は相当と認める場合において、当事者に異議がないときは証人の尋問に代えて書面の提出をさせることができます。

→なお、書面尋問の規定は証人尋問に限られ、当事者尋問や鑑定人に対する意見の陳述には準用されない。ただし、簡易裁判所においては裁判所は相当と認めるときは証人、当事者、鑑定人の意見の陳述に代えて書面の提出をさせることができる。

 

当事者尋問

→当事者本人やその法定代理人又は法人などの代表者を証拠方法として尋問し、その供述を証拠資料とする証拠調べの方法のことである。

→裁判所は申立や職権で当事者本人を尋問することができる。

→証人尋問とは異なり、当事者に宣誓させるかどうかは任意となる。

法定代理人のいる未成年者にも当事者尋問をすることができる。もちろん、法定代理人にも当事者尋問することができる。

→証人尋問同様に受命裁判官や受託裁判官が裁判所外で尋問することができる。その権限は証人尋問の規定が準用される。

→16歳未満の者や宣誓の趣旨を理解することができない者については、宣誓させることができない。

→尋問の順序、書類に基づく陳述の原則禁止、テレビ電話会議システムなど各規定が準用されている。

→当事者が当事者尋問において陳述した事実は証拠資料にはなるが、口頭弁論における事実主張とはみなされない。そのため、当事者尋問で自白は成立しない。

→当事者尋問をする場合に当事者が正当な理由なく出頭しない場合は、又は宣誓や陳述を拒んだ場合は、裁判所は尋問事項に関する相手方の主張を事実と認めることができる。

→当事者は証人ではないため、宣誓して虚偽の陳述をしても偽証罪は成立せず過料にとどまる。

→証人尋問とは異なり、書面尋問は認められないが簡易裁判所においては可能である。

 

鑑定

→特別の学識経験を有する鑑定人に、その学識経験に基づく判断や意見を裁判所に報告させる証拠調べで、証拠方法を鑑定人という。

→鑑定に必要な学識経験を有する者は出頭し、宣誓の上、鑑定意見を報告するという鑑定義務を負う。

→証言や宣誓を拒むことができる者や、そのような者と同一の地位にある者及び16歳未満の者又は宣誓の趣旨を理解できないものは適格を欠くため鑑定人となることはできない。

→鑑定人は証人とは違って代替性があるため、誠実に鑑定することを妨げる事情があれば忌避することができ、勾引も認められない。

→鑑定人に意見を述べさせるのは書面か口頭である。ただし、尋問は簡易裁判所を除いて書面ではすることができない。

→鑑定人が一度意見を述べた場合であっても、裁判所は、鑑定人に意見を述べさせたい場合において、当該意見の内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するために必要があるときら申立または職権で鑑定人にさらに意見を述べさせることができる。

→鑑定人が意見陳述をした後に裁判所は鑑定人に質問をすることができるが①裁判長②申出をした当事者③もう一方の当事者となる。

→裁判所は一定の場合には鑑定人にテレビ電話システムにて意見を述べさせることができる。

 

証人尋問、当事者尋問、鑑定の異同

①証人尋問の申出は証人を指定してしなければならないが、鑑定の申出は鑑定人を指定する必要はなく鑑定事項を表示すれば足りる。

②証人尋問では証人に宣誓させる必要がある。もっとも16歳未満の者や宣誓の趣旨を理解できないものには宣誓をさせることはできない。当事者尋問における宣誓は任意的である。

③証人尋問や当事者尋問では裁判長の許可がなければ書面に基づく陳述はできないが、鑑定人は書面でも口頭でも意見を述べることができる。

④証人尋問の場合、裁判所は相当と認める場合で当事者の異議がなければ証人の尋問に代えて書面の提出をさせることができる。当事者尋問では書面尋問はすることなできない。

→なお、簡易裁判所では、裁判所が相当と認める場合には、証人尋問、当事者尋問、鑑定人への意見陳述に代えて書面を提出させることができる。

⑤証人が正当な理由なく出頭しない場合には過料、罰金、拘留、勾引の制裁をすることができる。一方、当事者が正当な理由なく出頭せず又は陳述を拒んだときは裁判所は尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる。

 

【刑法】労役場留置

 労役場留置とは罰金または科料の言い渡しを受けた者が、これを完納することができないときに、その者に労役を課す制度である。

 罰金や科料を回収するというよりは、納付を促す目的にあるとされる。

 なお、法人が罰金を完納することができない場合でもその法人の代表者を労役場に留置することはできない。

 また、少年については、科料を完納するそとができない場合でも労役場に留置することはできない。

 

第十八条 

①罰金を完納することができない者は一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。

科料を完納することができない者は一日以上三十日以下の期間、労役場に留置する。

③罰金を併科した場合又は罰金と科料を併科した場合における留置の期間は、三年を越えることができない。科料を併科した場合は60日を越えることができない。

④罰金又は科料の言い渡しをするときは、その言い渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。

⑤罰金については裁判が確定した後三十日以内、科料については裁判が確定した後十日以内は、本人の承諾がなければ留置の執行をすることができない。

⑥罰金又は科料の一部を納付した者についての留置の日数は、その残額を留置一日の割合に相当する金額で除した日数とする。

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