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【民事訴訟法】証拠関連まとめ②

書証
→文書に記載されている内容を裁判所が閲覧して、その意味内容を証拠資料とする証拠調べである。一般に証人尋問、当事者尋問、鑑定人などの人証より証拠力は高いとされる。

形式的証拠力
→文書に作成名義人と表示されている者と、実際にその文書を作成した者が一致していること。つまり、証拠としては、作成者の意思にもとづいてその文書が作成されたことを要する。
→書証における文書についてはその成立が真正であることを証明しなければならないが、成立の真正とは文書が作成者の意思に基づいて作成されたことを意味する。
→公文書は、方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められる場合には真正に成立したものと推定される。また、公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会することができる。
→私文書について、文書の成立の真正が争われた場合、文書の成立の真否は、筆跡又は印影の対象によっても証明することができる。また、私文書は本人又は代理人の署名か押印があれば真正に成立したものと推定される。
→文書の成立の真否について当事者が認否した場合、それは補助事実であり裁判所を拘束しない。

実質的証拠力
→真正な文書の記載内容が、要証事実の証明にどれだけ役立つかということ。文書の実質的証拠力が確定してはじめて実質的証拠力が問題となり、その有無は裁判官の自由心証に基づく。

【コラム 二重の推定】
 私文書はは署名か押印があればその真正が推定される。したがって、私文書に三文判が押印されているだけでは文書の真正を証明することができない。
 しかし、実印すなわち印鑑証明書が添附されている場合、①実印であれば本人の意思にもとづき押印されたという推定と②文書が作成者の意思に基づいて作成されたという推定の二段階でなされる。
 ①については実印は厳重に保管されるべきであるとする経験則を根拠としている。

書証の方式
①自ら文書を提出する。
②文書提出命令の申立
→文書の表示、趣旨、所持者、証明すべき事実、文書の提出義務の原因を明らかにしなければならない。ただし、表示や趣旨については曖昧でよい場合がある。
→裁判所は文書提出命令の申立を理由があると認めるときは、決定で文書の所持者に対してその提出を求めることができる。
→文書に取り調べる必要がないと認める部分又は提出の義務があると認めることができない部分があるときは、その部分を除いて提出を命じることができる。
→第三者に対して文書提出命令を出そうとする場合、その第三者を審尋しなければならない。
→文書提出命令の申立の決定に対しては即時抗告をすることができる。提出命令にも却下命令にもすることができるが、前者は文書の所持者、後者は所持者しかすることができない。

【コラム 文書提出義務】
文書提出命令の申立をする場合は文書提出義務の原因を明らかにしなければならない。次に掲げる場合は文書の所持者はその提出を拒むことができない。
→①②③までは当事者と文書の間に特別の関係がある場合に提出が義務づけられるものであり、④は一般に提出が義務づけられているものである。
①当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき
②挙証者が文書の所持者に対してその引渡し又は閲覧を求めることができるとき
③文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき
④上記以外の場合の他に、文書が次のいづれにも該当しないとき
→親族などが刑事訴追を受ける事項などが記載されている文書
→公務員の職務上の秘密に関する文書
→職務上知り得た事実で黙秘すべきもの又は技術・職業上の秘密に関する事項で黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書
→もっぱら文書の所持者の利用に供するための文書
→刑事事件に係る訴訟に関する書類など
→当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。当事者が相手方の使用を妨げる目的で提出の義務のある文書を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたときも同様である。
→さらに、相手方が当該文書の記載に関して具体的な主張をすること及び当該文書により証明すべき事実を他の証拠により証明することが著しく困難であるときは、裁判所はその事実に関する相手方の主張を真実と認めることができる。つまり、挙証者にとってその書証が唯一の証拠である場合である。
→第三者が文書提出命令に従わない場合は、裁判所の決定で20万以下の過料に処せられる。

【コラム インカメラ手続】
 裁判所は上記文書提出義務④における刑事事件に係る訴訟に関する書類等以外で、文書提出義務があるかどうか判断するために必要があれば所持者に提示させることができる。
 この場合、裁判所以外の誰もその提示された文書の閲覧を開示を求めることができない。

【コラム 即時抗告】
 通常の抗告はいつでもできるが、即時抗告は裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間のうちにしなくてはならない。執行停止という強力な効果があるためである。 
 なお、抗告は上告の一種である。したがって、たとえば地裁の決定に対しては高裁に抗告をすることになるが、抗告状は地裁に提出する。


③文書の送付嘱託の申立
→文書の所持者その文書の送付を嘱託することの申立である。文書提出義務の有無に関わらず利用することができる。任意の提出を求めるためにする書証の申出であり、主に官公署に対して利用される。
→当事者が法令により文書の正本又は謄本の交付を求めることができる場合にはすることができない。
→書証に関する規定は、図面、写真、録音テープ、ビデオテープ、その他の情報を表すために作成された物件で文書でないものにも準用される。

検証
→裁判官が五感の作用で物の形状、状態を認識し、その結果を証拠資料とする。
→検証の目的の提示や送付については、書証の申出、文書提出命令、文書送付の嘱託が準用されている。
→検証にあたっては必要があれば鑑定を命じることができる。※職権でも申立でも可能
→証拠保全として検証を行う場合ら裁判所は申し立てにより検証物の提示を求めることができる。

 

証拠保全手続

→裁判所が、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情がある場合に、申し立てによって本来の証拠調べに先立って証拠調べをすることができる。

→訴訟継続前でも訴訟継続中でもできる。

→訴訟継続前であれば申立がなければできないが、訴訟継続中であれば職権で証拠保全の決定をすることができる。

→証拠保全手続で尋問した証人について、当事者が口頭弁論における尋問の申し立てをしたときは裁判所はその尋問をしなければならない。

→訴えの提起前における証拠保全の申し立ては尋問を受けるべき者もしくは文書を所持する者の居所又は検証物の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所にしなければならない。

→訴えの提起後における証拠保全の申立はその証拠を利用すべき審級の裁判所にしなければならない。ただし、最初の口頭弁論の期日が指定され、又は事件が弁論準備手続もしくは書面による準備手続に付された後口頭弁論の終結に至る間は、受訴裁判所に対してする。

→証拠保全の申立は書面で行う。

→相手方を指定できない場合でも証拠保全の申し立てをすることができる。その場合は特別代理人が選任される。

→証拠保全の決定に対しては不服を申し立てることはできないが、却下の決定には不服を申し立てることができる。

→証拠保全に関する費用は訴訟費用の一部となる。

→証拠保全の手続において尋問をした証人について、当事者が口頭弁論における尋問の申出をしたときは裁判所はその尋問をしなければならない。

 

自由心証主義

→裁判官が事実認定をする場合には口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果から裁判官の自由な心証によって行う原則である。

→弁論の全趣旨とは口頭弁論に現れた一切の資料・模様・状況などをさす。当事者の弁論内容の他に証人・当事者・代理人の態度、攻撃防御方法の提出なども含まれる。

→証拠調べの結果とは、証拠方法を取り調べて得られた証拠資料のことである。これには証拠方法については制限がなく、証拠方法を取り調べて得られた証拠をどのように評価してもよいという二つの内容がある。

→事実認定を弁論の全趣旨のみで判断することもできる。

→自由心証主義は、主要事実・間接事実・補助事実に適用される。

→当事者の一方の申出にかかる証拠を相手方に有利な事実を認定するために使うこともできる(証拠共通の原則)。

→損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果にもとづき、相当な損害額を認定することができる。