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【民事訴訟法】証拠関連まとめ①

証拠法に関する用語
①証明
→事実の存否の判断について裁判官が確認した状態、又はその状態を実現するために当事者が証拠を提出する行為
②疎明
→証明の程度には至らないが一応確からしいという程度の蓋然性が認められる状態、又はその状態を実現するために当事者が証拠を提出する行為
→疎明は即時に取り調べられる証拠によってしなければならない。
③本証
→自分に立証責任のある事実を証明するための証拠又はその証拠を提出する活動のこと。本証の場合は、裁判官の心証を積極的に確信に至らしめなければならない。
④反証
→相手方が証明責任を負う事実を否認するための証拠又はその証拠を提出する活動の事。反証の場合は、裁判官の心証が確信に至るのを防げば足りる。

【コラム 抗弁】
相手の主張を認めつつ、それとは矛盾しないで新たな主張をすることを抗弁という。たとえば、「同時履行の抗弁」であれば売買による引渡請求権に基づく引渡し給付を求める場合、相手方は売買契約や原告の引渡し請求権を認めつつ、代金未払いのため、同時履行の抗弁をすることができる。
→この例では引換給付判決がなされるだろう。

⑤直接証拠
→主要事実を直接証明するための証拠
→たとえば貸金返還請求における金銭消費貸借契約書がこれにあたる。
⑥間接証拠
→間接事実や補助事実を証明するための証拠
→たとえば貸金返還請求における、高価な物品を購入したという証言や明らかに契約書の筆跡が違うとする補助事実を証明する文書などである。

【コラム 証拠】
 権利義務の発生・変更・消滅に関する事実を主要事実、主要事実の存否を推認する事実を間接事実、証拠に関する事実を補助事実という。
 なお、弁論主義における事実とは主要事実の とであり、自白の拘束力は主要事実にのみ生じ、間接事実や補助事実は裁判所や当事者を拘束しない。

⑦証拠方法
→証拠調べの対象となる証人や文書
⑧証拠資料
→証拠資料によって得られた、証人の証言や文書に記載されている内容のことである。

【コラム 資料】
弁論により得られた資料を訴訟資料、証拠調べによって得られた資料を証拠資料という。併せて裁判資料という。

⑨証拠能力
→証拠方法として用いることができるということで、民事手続では原則として証拠能力に制限はない。
⑩証拠力
→証拠資料が事実認定に役立つ程度の事。証明力ともいう。


証拠調べなど
→訴訟における証明の対象として問題となるのは、裁判をするのに必要な事実、法規、及び経験則である。
→当事者が主張した事実について相手方が争う場合は、主要事実・間接事実・補助事実を問わず、原則として証拠による証明の対象となる。
→当事者がその存否を争うことによって証明が必要とされるに至った事実を要証事実という。
→裁判上の自白が成立した事実及び顕著な事実については証明が不要である。

【コラム 裁判所に顕著な事実】
たとえば同一の裁判所で破産手続開始決定があった事実など。裁判官が個人的に知っている事実は含まれない。

職権証拠調べの禁止
→弁論主義により職権証拠調べは原則としてすることができないが、以下の場合は当事者の申出がなくても、職権で行うことができる。
①管轄に関する事項
②調査の嘱託
→裁判所は必要な調査を官庁もしくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所、その他の団体に嘱託することができる。
→調査の嘱託は自然人である個人にするこたはできない。証人尋問や鑑定でおこなう。
→調査の嘱託によって得られた結果を証拠とするには、裁判所がそれを口頭弁論で提示して当事者に意見陳述の機会を与えれば足りる。当事者の援用を要しない。
③当事者尋問
→なお、弁論ではないため、ここでの陳述は自白としては認められない。
④鑑定の嘱託
→客観的な立場の機関などに嘱託するため職権証拠調べができるのであって、裁判所自らが鑑定をすることはできない。
⑤検証の際の鑑定
⑥訴訟係属中の証拠保全


証拠の申出
→証明すべき事実及びこれと証拠との関係を具体的に明示して行う必要がある。
→証拠の申出は口頭ですることもできる。
→証拠の申出は訴訟の進行状況に応じて適切な時期に提出しなければならないが、期日前や弁論準備手続においてすることができる。
→証拠の申出を裁判所は却下することができるが、それに対しては即時抗告をすることができない。
→証拠の申出の撤回は、証拠調べの開始前は自由にすることができる。開始後は相手方の同意があればすることができる。ただし、証拠調べが終了するともはや撤回することができない。
→なお、証人尋問が実施される前に当事者が当該証人尋問の申出を撤回した場合において、その当事者がその審級において、同一の証人について証人尋問の申出をすることは許されないという規定はない。

【コラム 証拠の採否】
裁判所は当事者が申し出た証拠で必要ないと認めるものは取り調べを要しません。つまり、証拠調べを実施するかどうかは裁判所の裁量である。裁判官は証拠によって心証を形成するが、どの証拠によって心証を形成するかは裁判所の裁量となる。

証拠調べ
→証拠調べの期日は、急速を要する場合を除き、申立人及び相手方を呼び出さなければならない。
→なお、当事者が呼び出しに応じずに期日に出頭しない場合においても証拠調べをすることができる。

【コラム 集中証拠調べ】
証人及び当事者本人の尋問はできる限り、争点及び証拠の整理が終了した後に集中して行う。
→一般的には下記の流れとなる。
①第一回口頭弁論の実施
→今後の方針などを確認
②争点・証拠の整理手続
→争点などの確認
③後続の口頭弁論の実施
→証人尋問など

人証
→証人尋問、当事者尋問、鑑定がある。
→証人尋問は証人を証拠方法として尋問する証拠調べのことである。
→当事者尋問は当事者本人やその法定代理人又は法人の代表者を証拠調べの証拠方法として尋問する証拠調べのことである。
→鑑定とは、特別の学識経験を有する鑑定人に、その学識経験に基づく判断や意見を裁判所に報告させる証拠調べの事

証人尋問
→証人とは過去の事実や状態について認識した内容を陳述する者のことである。そして、尋問によりこの陳述を求める手続が証人尋問である。なお、当事者の申出によるものであり裁判所の職権ではすることができない。
→裁判所は特別の定めがある場合を除き、何人でも証人として尋問することができる。証人能力はすべての人に認められている。
→もっとも当事者本人と法定代理人は当事者尋問の手続によるので、その訴訟においては証人になることはできない。
→公務員な尋問の規定においては、公務員又は公務員であった者を証人として職務上の秘密について尋問する場合には、裁判所は当該監督官庁の証人を得なければならない。この証人は公共の利害を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある場合を除き、拒むことができない。

【コラム 補助参加人の証人尋問】
証人能力は原則として制限がないため、当事者及び法定代理人以外のすべての者を証人として尋問することができる。したがって、補助参加人を証人として尋問することができる。
→補助参加人とは判決の結果に利害関係がある者であり、裁判所の許可により訴訟参加することができる。

【用語 訴訟参加】
訴訟係属中に第三者がその訴訟に参加すること。下記の形態がある。
①補助参加
→判決の結果に利害関係がある者の訴訟参加である。口頭弁論で陳述することができる。
→参加人は当事者であるため、判決の名宛人ではないため既判力は生じない
→利害関係は法律上の利害関係であることを要する。
→補助参加は参加の趣旨と理由を明らかにして補助参加により訴訟行為をすべき裁判所にしなければならない。
→補助参加の申出は補助参加人としてできる訴訟行為とともにすることができる。
→当事者は参加に関して異議を述べることができ、その場合は裁判所は補助参加の許否を決定により裁判をする。
→上記に関しては即時抗告をすることができる。この場合、補助参加人は参加の理由を疎明しなくてはならない。
→当事者が異議を述べることがなく、弁論や弁論準備手続で申述した後は異議を述べることができなくなる。
②補佐人
→当事者の陳述を補助する者。当事者とともに出頭するには裁判所の許可を要するがいつでま取り消すことができる。

手続の流れ
→証人尋問の申出は証人を指定し、かつ尋問に要する見込みの時間を明らかにしてしなければならない。
→証人尋問は、証人の出頭⇒宣誓⇒尋問に対する証言
→証人尋問の申し出をした当事者は、証人を証人尋問の期日に出頭させるように努めなくてはならない。
→証人が正当な理由なく出頭しないときは、それによって生じた訴訟費用の負担が命じられ、かつ過料や罰金、拘留に処せられる。
→また証人には代替性がないため、裁判所は正当な理由なく出頭しない証人の勾引を命じることができる。
→証言について、証人又は証人と次に掲げる関係を有する者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれがある事項に関するときは、証人は証言を拒むことができる。証言がこれらの者の名誉を害すべき事項に関するときも同様である。
 ※配偶者、4親等内の血族、もしきは三等親内の姻族の関係にあり、又はあったこと
 ※後見人と被後見人の関係にあること
→証言を拒絶する場合はその理由を疎明しなければならない。その当否は当事者を審尋して決定で裁判するのが原則である。その裁判に関しては当事者及び証人は即時抗告をすることができる。
→証言拒絶を理由がないとする裁判が確定した後に、証人が正当な理由なく証言を拒んだ場合には、不出頭に対する制裁規定が準用される。

【コラム 証人が黙秘の義務を負っている場合】
次の場合には、証人は黙秘の義務を免除された場合を除き、証言を拒むことができる。
①公務員やそうであった者を証人として職務上の秘密について尋問するときは裁判所は当該監督官庁の証人を得なければならない。
②医師、歯科医師、薬剤師、医療品販売業者、助産師、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教関係者が職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて尋問を受けるとき
③技術又は職業の秘密に関する事項について尋問を受けるとき。


宣誓
→証人がした場合はまず宣誓させなければならない。もっとも16歳未満の者や宣誓の趣旨を理解することができない者を証人として尋問する場合は宣誓させることができない。
→また、証言拒絶権を有する証人で証言拒絶の権利を行使しないものを尋問する場合には宣誓をさせたいことができ、196条各号に掲げる関係を有する者に著しい利害関係のある事項について尋問を受けるときは宣誓を拒むことができる。
→宣誓が拒絶された場合の手続については不出頭の制裁の規定が準用されている。

証人尋問の方法
→当事者、他の当事者、裁判長の順序で行う。
それぞれ主尋問、反対尋問、補充尋問という。
裁判長が適当と認めるときは当事者の意見を聴いて、順序を変更することができる。
 なお、当事者が変更について異議を述べたときは、裁判所は決定でその異議について裁判をする。
→証人は裁判長の許可を受けたときを除き、書類に基づいて陳述をすることができない。

裁判所外における証人尋問
→裁判所は次に掲げる場合に限り、受命裁判官又は受託裁判官に裁判所の外で証人の尋問をさせることができる。
①証人が受訴裁判所に出頭する義務がないとき、又は正当な理由により出頭することができないとき。
②証人が受訴裁判所に出頭するについて不相当な費用又は時間を要するとき
③現場において証人を尋問することが事実を発見するために必要であるとき
④当事者に異議がないとき。

 

【コラム 受命裁判官と受託裁判官】

前者は裁判官複数人の合議体を構成する、ある裁判官であり、合議体より個別に受命された者である。後者は裁判事務の委託を受けた他の裁判所の裁判官である。

 

テレビ電話会議システムの利用

→裁判所は次に掲げる場合には最高裁判所規則で定めるところにより、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法によって、証人の尋問をすることができる。

①証人が遠隔の地にいるとき

②事案の性質、証人の年齢又は心身の状態、証人と当事者本人又はその法定代理人との関係その他の事情により、証人が裁判長及び当事者が証人を尋問するために在籍する場合において陳述するときは圧迫を受けて精神の平穏を著しく害するおそれがあると認められる場合であって相当と認めるとき

 

書面尋問

→裁判所は相当と認める場合において、当事者に異議がないときは証人の尋問に代えて書面の提出をさせることができます。

→なお、書面尋問の規定は証人尋問に限られ、当事者尋問や鑑定人に対する意見の陳述には準用されない。ただし、簡易裁判所においては裁判所は相当と認めるときは証人、当事者、鑑定人の意見の陳述に代えて書面の提出をさせることができる。

 

当事者尋問

→当事者本人やその法定代理人又は法人などの代表者を証拠方法として尋問し、その供述を証拠資料とする証拠調べの方法のことである。

→裁判所は申立や職権で当事者本人を尋問することができる。

→証人尋問とは異なり、当事者に宣誓させるかどうかは任意となる。

法定代理人のいる未成年者にも当事者尋問をすることができる。もちろん、法定代理人にも当事者尋問することができる。

→証人尋問同様に受命裁判官や受託裁判官が裁判所外で尋問することができる。その権限は証人尋問の規定が準用される。

→16歳未満の者や宣誓の趣旨を理解することができない者については、宣誓させることができない。

→尋問の順序、書類に基づく陳述の原則禁止、テレビ電話会議システムなど各規定が準用されている。

→当事者が当事者尋問において陳述した事実は証拠資料にはなるが、口頭弁論における事実主張とはみなされない。そのため、当事者尋問で自白は成立しない。

→当事者尋問をする場合に当事者が正当な理由なく出頭しない場合は、又は宣誓や陳述を拒んだ場合は、裁判所は尋問事項に関する相手方の主張を事実と認めることができる。

→当事者は証人ではないため、宣誓して虚偽の陳述をしても偽証罪は成立せず過料にとどまる。

→証人尋問とは異なり、書面尋問は認められないが簡易裁判所においては可能である。

 

鑑定

→特別の学識経験を有する鑑定人に、その学識経験に基づく判断や意見を裁判所に報告させる証拠調べで、証拠方法を鑑定人という。

→鑑定に必要な学識経験を有する者は出頭し、宣誓の上、鑑定意見を報告するという鑑定義務を負う。

→証言や宣誓を拒むことができる者や、そのような者と同一の地位にある者及び16歳未満の者又は宣誓の趣旨を理解できないものは適格を欠くため鑑定人となることはできない。

→鑑定人は証人とは違って代替性があるため、誠実に鑑定することを妨げる事情があれば忌避することができ、勾引も認められない。

→鑑定人に意見を述べさせるのは書面か口頭である。ただし、尋問は簡易裁判所を除いて書面ではすることができない。

→鑑定人が一度意見を述べた場合であっても、裁判所は、鑑定人に意見を述べさせたい場合において、当該意見の内容を明瞭にし、又はその根拠を確認するために必要があるときら申立または職権で鑑定人にさらに意見を述べさせることができる。

→鑑定人が意見陳述をした後に裁判所は鑑定人に質問をすることができるが①裁判長②申出をした当事者③もう一方の当事者となる。

→裁判所は一定の場合には鑑定人にテレビ電話システムにて意見を述べさせることができる。

 

証人尋問、当事者尋問、鑑定の異同

①証人尋問の申出は証人を指定してしなければならないが、鑑定の申出は鑑定人を指定する必要はなく鑑定事項を表示すれば足りる。

②証人尋問では証人に宣誓させる必要がある。もっとも16歳未満の者や宣誓の趣旨を理解できないものには宣誓をさせることはできない。当事者尋問における宣誓は任意的である。

③証人尋問や当事者尋問では裁判長の許可がなければ書面に基づく陳述はできないが、鑑定人は書面でも口頭でも意見を述べることができる。

④証人尋問の場合、裁判所は相当と認める場合で当事者の異議がなければ証人の尋問に代えて書面の提出をさせることができる。当事者尋問では書面尋問はすることなできない。

→なお、簡易裁判所では、裁判所が相当と認める場合には、証人尋問、当事者尋問、鑑定人への意見陳述に代えて書面を提出させることができる。

⑤証人が正当な理由なく出頭しない場合には過料、罰金、拘留、勾引の制裁をすることができる。一方、当事者が正当な理由なく出頭せず又は陳述を拒んだときは裁判所は尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる。