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【民事訴訟法】裁判によらない訴訟の完結、控訴・再審、手形訴訟

訴えの取り下げ
→原告の審判申し立ての撤回を内容とする裁判所に対する訴訟行為
→取り下げ要件は下記となる。
①訴えの取り下げは終局判決が確定するまでにすることができる。
→すなわち、言渡し後でも確定する前であれば訴えの取り下げは可能である。また、上級審での訴えの取り下げも可能であり、請求の一部のみの取り下げも可能である。
→通常共同訴訟の一人から、又は一人に対する訴えの取り下げも一部取り下げとして可能である。
→類似必要的共同訴訟の場合は、共同訴訟人1人が単独で取り下げることはできるが、固有必要的共同訴訟の場合は全員が共同で取り下げなければ効力が生じない。

②訴えの取り下げを単独で行うには訴訟能力が必要
→すなわち、被保佐人や被補助人が訴えを取り下げるためには、保佐人や補助人による特別の授権を要する

【コラム 被保佐人や被補助人と裁判】
被保佐人は基本的に裁判行為に関しては保佐人
の同意を要する。裁判をはじめたり、取下げをも含む。ただし、応訴をするには同意を要しない。

③訴えの取下げは、被告が本案につき準備書面を提出し、弁論準備手続で申述し、又は口頭弁論期日に弁論をした後は、被告の同意が必要
→なお、被告が第一回の口頭弁論期日に出頭した場合であっても、答弁書その他の準備書面を提出せず、かつ弁論もせずに退席したときには、訴えの取下げに被告の同意は不要である。


訴えの取下げの手続
→原則として書面でする必要がある。
→口頭弁論、弁論準備手続、和解の期日においては口頭ですることもできる。
→相手方が出頭していなくても、上記の期日には口頭での訴えの取下げをすることができる。ただし、その期日の調書の謄本を相手方に送達しなくてはならない。

訴えの取下げの効果
→訴訟は初めから係属していなかったとみなされ、訴訟は終了する。
→すでになされた終局判決は無効となり、時効の更新の効力も生じない。ただし、6ヶ月の時効の更新猶予の効力は生じる。
控訴審で訴えを取り下げた場合は、第一審の判決も含めて効力を失う。一方、控訴を取り下げた場合は第一審の判決が確定することになる。
→本案の終局判決後に訴えを取り下げた場合、原告は同一の訴えについて再訴が禁止される。
→却下判決の取り下げの場合は再訴は禁止されていない。

訴えの取り下げ擬制
→次の場合には訴えの取下げが擬制される。
①当事者双方が、口頭弁論もしくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論もしくは弁論準備手続における申述をしないで退廷もしくは退席をした場合において、1ヶ月以内に期日指定の申し立てをしないとき
②当事者双方が連続して二回、口頭弁論もしくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論もしくは弁論準備手続における申述をしないで退廷もしくは退席をしたとき。

請求の放棄と認諾
→前者は原告が請求に理由がないことを自認する裁判所に対する意思表示
→後者は被告が請求に理由があることを認める裁判所に対する意思表示
→本案判決と同じく、その請求に関する訴訟を終了させる効果をもつので、その前提要件として訴訟要件を具備する必要がある。
→請求の放棄や認諾に条件を付けることはできない。
→相手方の同意は必要なし。
→請求の放棄や認諾は、口頭弁論期日・弁論準備手続期日・和解の期日においてする。
→請求の放棄や認諾をする旨の書面を提出した当事者が、期日に出頭しない場合、その旨の陳述をしたものとみなすことができる。
→なお、弁論準備手続の期日における手続は、当事者の一方がその期日に出頭した場合には、電話会議システムの方法ですることもできる。※訴えの取下げや和解も同様である。
→請求の放棄や認諾が記載された調書が成立すると訴訟は終了する。放棄調書は請求棄却と同一の効果を生じ、認諾調書は請求認容の確定判決と同一の効果を生じる。
→訴えの取下げがあった部分については初めから係属していなかったものとみなされる一方で請求の放棄がされて調書に記載されるた、その記載は確定判決た同一の効果を生じるため、訴訟係属が消滅するわけではない。


訴訟上の和解
→訴訟係属中に当事者が訴訟物をめぐり主張について相互に譲歩することによって訴訟を全部又は一部終了させる旨の期日における合意のこと。
→判決の言渡しの後でも確定前であれば和解をすることができる。
→裁判所は訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試みて、又は受命裁判官や受託裁判官に和解を試みさせることができる。
→裁判所又は受命裁判官、受託裁判官は当事者の共同の申し立てがあるときは、事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる。
→和解条項の定めは、口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日における告知その他相当と認める告知によって行う。
→訴訟上の和解に無効や取消原因のような瑕疵がある場合、当該和解の効力を争う当事者は、口頭弁論の期日の指定の申立をして訴訟の続行を求めることができる。
→その他、和解無効確認の訴えや請求異議の訴えを提起することもできる。
→訴訟上の和解において、提起された訴えが訴えの利益を欠くとしても訴訟上の和解は無効とはならない。一方、当事者能力のような訴訟要件は必要であるとされる。
→訴訟上の和解が調書に記載されたときは、その記載は確定判決と同一の効果を生じる。

訴え提起前の和解
→当事者が請求の趣旨及び原因並びに争いの実情を表示して、相手方の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所に和解の申立をすること。
→訴え提起前の和解は訴額に関わりなく、簡易裁判所に職分管轄がある。
→和解が不調に終わった場合、和解期日に出頭した当事者双方の申し立てがあれば、裁判所は直ちに訴訟の弁論を命じ、この場合、和解の申し立てをした者は、その申し立てをした時に訴えを提起したとみなされる。
→申立人又は相手方が、和解の期日に出頭しない場合は裁判所は和解が調わないものとみなすことができる。

和解に代わる決定
簡易裁判所では、特例として、和解に代わる決定という制度も用意されている。
→金銭の支払いの請求を目的とする訴えの場合で、被告が原告の主張した事実を争わず、その他何らの防御な方法も主張しない場合に、被告の資力その他の事情を考慮して相当であると認めるときは、原告の意見を聴いた上で、一定の決定をすることができる。
→一定の決定とは、五年以内の範囲で支払の時期の定めか分割の定めをするものであり、これと併せて、一定の場合に訴え提起後の遅延損害金を免除する定めをすることができる。
→当事者が、その決定の告知を受けた日から2週間内に異議申し立てをするとその決定は効力を失う。異議申し立てがないと、その決定は和解と同一の効果を有する。
→なお、決定や命令は相当と認める方法で告知をすることにより効力を生じる。判決の言渡しでさえ当事者の出頭は必要ない。


控訴
簡易裁判所又は地方裁判所の第一審の終局判決に対して、その取消や変更を求める第二審の事実審への上訴申し立て行為
→控訴の提起は控訴状を第一審裁判所に提出してしなければならない。
→控訴が不適法でその不備を補正することができないときは、控訴裁判所は、口頭弁論を経ないで判決で控訴を却下することができる。
→控訴を提起するには、当事者が控訴の利益をもつことが必要である。控訴の利益は本案の申し立てと判決主文を比較して、判決主文で与えられたものが本案の申し立てで求めたものより小さい場合に認められる。

【コラム 相殺の抗弁と控訴の利益】
控訴の利益は、例えば、全部認容判決を得た原告や全部棄却判決を得た被告は控訴を提起できない。一方、予備的相殺の抗弁が認められて全部棄却判決が認められて全部棄却判決を得た被告は控訴を提起することができる。
→原告の主位的請求を棄却し、予備的請求を認容した判決については、原告にも被告にも控訴の利益がある。
→予備的請求とは主位的請求が認められない場合にする請求である。

控訴審における審理
控訴審の口頭弁論は当事者が第一審判決の変更を求める限度においてなされる。したがって、第一審で収集した資料を基礎として、そこに新たに収拾された資料を加えたうえで、不当の当否が審判される。これを続審制という。
控訴審の口頭弁論は第一審の訴訟資料や証拠資料を控訴審でも利用するため、直接主義の要請から当事者は第一審における口頭弁論の結果を陳述しなければならない。
控訴審における反訴の提起は相手方の同意がある場合に限りすることができる。
→裁判所は控訴人に対して第一審判決より不利益な判決をすることはできない。
→控訴の取下げは、控訴審の終局判決があるまですることができる。この場合は相手の同意は必要がない。第一審が確定するだけだからである。ただし、控訴審における訴えの取り下げは相手方の同意を得た上で終局判決が確定するまで可能である。

附帯控訴
→被控訴人が控訴審の口頭弁論終結時までに審判の範囲を拡張し、原判決を自己に有利なように変更を求めることである。
→例えば、500万の貸金返還請求訴訟において、300万の一部認容判決がされた場合は原告は200万が不服申し立ての限度であるが、被告は500万につき附帯控訴をして、審判の範囲を拡張することができる。
→附帯控訴状は第一審裁判所か控訴裁判所に対して提出する。
→控訴の取下げや却下があった場合は附帯控訴は効力を失うが、控訴の要件を満たしていれば独立した控訴とみなされる。
→附帯控訴も、控訴審の終局判決があるまで取り下げることができ、被控訴人の同意を必要としない。

 

再審
→確定した終局判決に重大な瑕疵がある場合に、その判決の取消と事件についての再審理を求める特別の不服申し立ての制度である。
→再審には、確定判決に対する再審と命令や決定に対する再審の申し立てとして準再審がある。

 

再審開始決定
→第一段階として、まずは決定そのものの手続である。再審の訴えの提起によって再審開始手続が開始される。

→再審の訴えにはその性質に反しない限り、その審級の訴訟手続に関する規定が準用される。

また、再審の訴えの提起は、一般の訴えの提起の場合に準ずる。
→再審事由の存在が認められる場合は再審開始決定が下される。当該決定が確定した後に第二段階として本案審理手続にはいる。
→再審の適法要件が欠く場合は訴え却下決定が下される。
→再審事由の存在が認められない場合は再審棄却決定がされる。この場合、同一の事由を不服の理由として、さらに再審の訴えを提起することはできない。

→再審開始決定手続では原則として口頭弁論は開かれない。。裁判所は再審の訴えの要件を職権で調査をする。

→裁判所は再審の事由があると判断するときは再審開始決定を行うが、この場合は相手方を審尋する必要がある。

→再審の訴えを提起した当事者は不服の理由を変更することができる。

→再審開始決定がされた場合でも再審請求棄却決定がされた場合でも当事者は即時抗告をすることができる。

→なお、再審請求棄却決定が確定した場合には、同一の事由を不服の理由として、さらに再審の訴えをすることはできない。

 

本案審理手続
→裁判所は再審開始の決定が確定した場合には、不服申し立ての限度で本案の審理及び裁判をする。裁判所は、再審の請求を棄却する場合を除いて、判決を取り消した上でさらに裁判をしなければならない。
→裁判所は判決を正当とするときは、再審の請求を棄却しなければならない。

→裁判所は再審開始手続の決定が確定した場合には、不服申し立ての限度で本案の審理及び裁判をする。この手続には必要的口頭弁論の原則が適用される。

→裁判所は原確定判決を正当でないとする場合には、原確定判決を取り消して、これに代わる新たな判決を言い渡し、原確定判決を正当と判断する場合には、再審請求を棄却する。

→既判力の基準時は、再審の訴えにおける事実審の口頭弁論終結の時となる。

 

再審の要件
①対象となる判決
→再審の訴えの対象となる判決は確定した終局判決に限定される。
→審級が異なる裁判所が同一の事件についてした判決に対する再審の訴えは上級の裁判所が併せて管轄する。
→控訴棄却の判決がされた場合には、訴えについての全面的な再審理がなされているため、第一審判決に対して再審の訴えを提起する必要がなく、再審の訴えを提起することができない。

②管轄
→原確定判決を言い渡した裁判所の専属管轄に属する。

③当事者適格
原告適格として、不服申し立ての対象となる確定判決によって不利益な効力を受ける者
→被告適格として、不服申し立ての対象となる確定判決を取り消されることにより不利益を受ける者
→なお、口頭弁論終結後の承継人は再審の訴えの原告適格を有する。

④再審事由

→法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと

→法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと

→法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと

→判決の基礎となった民事若しくは刑事上の判決その他の裁判又は行政処分が後の裁判又は行政処分により変更されたこと

→判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと

→不服の申し立てに係る判決が前に確定した判決と抵触すること。

 

※次の四点は罰すべき行為について、有罪の判決もしくは過料の裁判が確定したとき、又は証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限り再審の訴えをすることができる。

→判決に関与した裁判官が事件について職務に関する罪を犯したこと。

→刑事上罰すべき他人の行為により、自白に至ったこと又は判決に影響を及ぼすべき攻撃もしくは防御の方法を提出することを妨げられたこと

→判決の証拠となった文書その他の物件が偽造又は変造されたものであったこと

→証人、鑑定人、通訳人又は宣誓した当事者若しくは法定代理人の虚偽の陳述が証拠となったこと

 

【コラム 控訴と再審】

 控訴審において事件につき本案判決をしたときは、第一審の判決に対し再審の訴えを提起することができない。

 

⑤再審期間

→確定判決後その再審事由を知った日から30日の不変期間内に提起しなければならない。

→当事者が再審事由があることを知らなかった場合にも、判決確定の日又は再審事由が判決確定後に生じたときは、その日から五年を経過すれば、もはや再審の訴えは提起することができない。

→代理権の欠缺と既判力の抵触についての再審事由については再審期間の制限はない。

 

⑥再審の補充性

→再審事由をすでに当該事件の上訴手続で主張していたか、又はその存在を知っていながら主張しなかった場合は、再審の訴えを提起することはできない。

 

準再審

→即時抗告をもって不服を申し立てることができる決定又は命令で確定したものに対しては再審の申し立てをすることができる。

→たとえば、確定した訴状却下命令に対して再審の申し立てをすることができる。

 

手形訴訟

→手形による金銭の支払いとこれに付帯する法定利率による損害賠償の支払いを求める場合に利用できる訴訟法における制度である。

→原告は手形金の支払いを請求する場合は手形訴訟を提起するか通常訴訟を提起するかを選択することができる。

→原告が手形訴訟による審理及び裁判を求めるには、その旨の申述を訴状に明記する必要がある。

→手形訴訟の原告は、口頭弁論終結に至るまで、手形訴訟を通常訴訟に移行させる旨の申述をおこなうことができ、その際に被告の同意は不要である。

→特別な事情がある場合を除き、最初の口頭弁論期日にすべての攻撃防御方法を提出し、その審理を完了しなければならない。

→手形訴訟においては証拠調べは挙証者の所持する文書についての書証に限りすることができる。

→文書の真否と手形の呈示に関する事実については当事者尋問が可能だが、証人尋問はできない。

→一般の訴訟要件を欠く場合には、訴え却下判決がなされる。そのような却下判決に対しては控訴をすることができる。

→原告の請求を認容する判決には職権で仮執行の宣言を付けなければならない。

→不服申し立てにつき、手形訴訟の終局判決に対しては控訴をすることができない。

→判決書又はそれにかわる調書の送達を受けた日から2週間以内にその判決をした裁判所に異議を申し立てることができる。

→適法な異議があった場合には、訴訟は口頭弁論終結前の状態に復し、通常手続に移行する。

→異議による通常訴訟の審理の結果、手形判決と同じ結論に達したときは、裁判所は手形訴訟の判決を認可しなければならない。

→手形判決と異なる結論となる場合又は手形判決の手続が法律に違反している場合には、裁判所は手形判決を取り消して新たな判決をすることになる。

→異議を申し立てて通常訴訟をした場合の判決については控訴することができる。