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【民事執行法】動産執行・担保権の実行としての強制競売

少額訴訟債権執行
少額訴訟に係る債務名義に基づき、その債務名義を作成した簡易裁判所裁判所書記官に債権執行を認めること。
→金銭以外の債権を差押えることはできない。
→以下の場合に債務名義となる。
少額訴訟における確定判決
②仮執行の宣言を付した少額訴訟判決
少額訴訟における訴訟費用又は和解の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分
少額訴訟における和解又は認諾の調書
少額訴訟における民事訴訟法275条の2第一項の規定による和解に代わる決定

→換価手続は債権者の直接取立、供託された弁済金の交付によりおこなう。
→転付命令、譲渡命令、売却命令、管理命令、供託された場合の配当は認められない。これらの手続をとるためには、地方裁判所への移行が必要となる。
→以下の場合は地方裁判所へ移行する。
①債権者が転付命令等を求め移行の申し立てをした場合
②供託された金銭について配当を実施すべき場合
③執行裁判所が相当と認める場合

動産執行
→債務者の所有する動産を差押え、これを換価して債権者の満足に充てる執行方法
→動産執行の対象となる動産は下記
①動産
②登記できない土地の定着物
③土地から分離する前の天然果実で一ヶ月以内に収穫することが確実なもの
④裏書きの禁止されている有価証券以外の有価証券

→動産執行は、債権者の申し立てにより執行官の目的物に対する差押えにより開始する。
→動産執行の申立書には、差押えるべき動産の所在場所を特定して記載しなければならない。
→そして、どの動産を差押えるべきなのかは、執行官が債務者の利益を考慮して判断する。
→債務者は差押物の処分が禁止されます。差押え後になされた処分行為の効力は、差押権者のみならず、その差押えに基づく執行手続に参加したすべての債権者に対抗できない。

債務者の占有する動産の差押え
→債務者の占有する動産の差押えに際しては、執行官は、債務者の住居その他債務者の占有する場所に立ち入り、金庫その他の容器について目的物を捜索することができる。
→捜索のために必要があるときは、閉鎖した戸及び金庫その他の容器を開くため必要な処分をすることができる。

債権者又は第三者の占有する動産の差押え
→債権者が占有する動産は、債権者からの提出を受けて差押えをする。
→第三者が占有する動産は、第三者が動産の提出を拒まない限り差押えることができます。第三者が提出を拒むときは、動産引渡請求権を債権執行の手続で差押える。
→差押えた動産は執行官が保管するが、相当と認められるときは債務者に保管させることができる。
→差押物について封印その他の方法で差押えの表示をしたときに限り、差押えの効力を有する。


二重差押えの禁止
→執行官は差押物又は仮差押えの執行をした動産をさらに差押えることはできない。
※不動産執行は二重開始決定が可能。債権執行は二重差押が可能。
→まだ差押えていない動産がある場合はこれを差押える。
→差押えるべき動産がないときは、その旨を明らかにして、その動産執行事件と先の動産執行事件を併合する。

超過差押えの禁止
→動産の差押えは、差押債権者の債権及び執行費用の弁済に必要な限度を超えてはならない。
→差押え後に目的物の値上がり等によって限度を越えることが明らかになったときは執行官はその越える限度において差押えを取消す必要がある。


無剰余差押えの禁止
→差押えるべき動産の売得金から手続き費用を弁済し、剰余を生じる見込みがないときは、執行官は差押えることはできない。
→差押えをした後であっても、その差押物の売得金の額が、差押債権者の債権に優先する債権の額及び手続費用の合計額以上となる見込みがないときは執行官は差押えを取消さなければならない。
→差押物について相当な方法による売却の実施をしてもなお売却の見込みがないときは、執行官はその差押物の差押えを取消すことができる。

配当
→動産執行において配当要求できるのは先取特権者と質権者である。

担保権の実行としての競売等
→債務名義を必要とせず、担保権の有する優先弁済権に内在する換価権に基づいて換価した代金から満足を得る手続。
→担保不動産競売は強制競売により、担保不動産収益執行は強制管理によりおこなう。
→強制競売又は担保権の実行としての競売の開始決定がなされた不動産について担保不動産競売の申し立てがあったときは、執行裁判所は更に担保不動産競売の開始決定をする。
→担保不動産競売、担保不動産収益執行のいずれを実行するにおいても、債務名義は不要である。
→ただし、担保権の存在を認識するための一定の文書は必要である。
①担保権の存在を証する確定判決等の謄本
②担保権の存在を証する公証人が作成した公正証書の謄本
③担保権の登記に関する登記事項証明書
④一般先取特権では、その存在を証する文書

不服申し立て
→不動産担保権の実行の場合は、担保権の消滅や不存在などの実体上の瑕疵を理由として執行抗告・執行異議の申し立てをすることができる。
→本来、執行抗告・執行異議は執行手続上の瑕疵に対する不服申し立てだが、不動産担保権の実行においては債務者保護の観点から簡易な救済方法を認めている。
→請求異議の訴えはできない。

代金納付による買受人の不動産の取得
→担保不動産競売においては、代金の納付による買受人の不動産の取得は担保権の不存在又は消滅により妨げられない。

開始決定前の保全処分
→執行裁判所は、債務者又は不動産の占有者が価格減少行為をするときは、保全処分又は公示保全処分を命ずることができる。
→開始決定後であれば、売却のための保全処分を申し立てればよいが、申し立て以前でも価格減少行為をが行われる場合にそれをやめさせることができる。
→この保全処分から3ヶ月以内に担保不動産競売の申し立てをしなければならない。

【用語 価格減少行為 公示保全処分】
価格減少行為
→不動産の価格を減少させ、又は減少させるおそれのある行為
公示保全処分
→執行官に、当該保全処分の内容を、不動産の所在する場所に公示書その他の標識を掲示する方法により公示させることを内容とする保全処分。

保全処分ができる期間
→差押権者は執行開始から代金納付までであれば可能。
→最高価買受申出人であれば、買い受けの申し出から引渡命令の執行までの間であれば可能。
→担保権者は担保不動産競売開始決定前でも買受人による代金納付までは可能。


不動産執行の規定の準用
民事執行法第44条の規定は不動産担保権の実行について、第二章第1款第2目の規定は担保不動産競売について、同款第3目の規定は担保不動産収益執行について準用される。
→担保不動産競売における売却手続において、不動産の上に存在する留置権は売却により消滅しない。
→配当表に記載された各債権者の債権又は配当の額について不服のある債権者及び債務者は、配当期日において、異議の申し出をすることができる。※配当異議の申出
 なお、ここでいう債務者には物上保証人も含まれる。

非金銭執行
→金銭債権以外の請求権の満足を目的とする強制執行のことである。

直接強制
→債務者が任意に債務を履行しない場合に、執行機関の執行行為により、債務者の意思にかかわりなく直接にその義務を実現する執行方法である。
→非金銭債権のうち、物の引渡しや明渡しの強制執行は原則として直接強制の方法による。

代替執行
→債務者以外の者によっても給付の内容を実現できる債務について、第三者にその内容を実現させ、それに要した費用を債務者に負担させる執行方法

間接強制
→債務者が債務の内容を任意に履行しない場合、一定の期間を定めて、その期間内に履行しなければ相当額の金銭を制裁金として支払わせる形で債務の履行を間接的に強制する執行方法である。

非金銭債権に関する注意点
→不作為を目的とする債務についての強制執行については代替執行の方法又は間接強制の方法によって行う。なお、代替執行の方法によることができる場合であってま間接強制が認めていないわけではない。
→直接強制や代替執行ができる債権でも、債権者の申し立てがあり、金銭債権ではない場合は間接強制をすることができる。
→金銭債権は原則として間接強制ですることはできないが、扶養義務等に係る債権の場合で以下に該当する場合以外で債権者の申し立てがあれば間接強制によりすることができる。
①債務者が支払能力を欠き弁済することができない場合
②弁済することで著しく生活が窮迫する場合

→間接強制の決定をするには、申し立てな相手方を審尋する必要がある。
→事情の変更があったときは、執行裁判所は申し立てにより間接強制の決定を変更することができる。
→間接強制決定又は間接強制決定を変更する決定には執行抗告をすることができる。

財産開始手続
→金銭債権についての強制執行等を実効性のあるものとするために、債権者の申し立てによって債務者の財産を明らかにするための制度。
→債務者の普通裁判籍を管轄する地方裁判所が執行裁判所として管轄する。
→申立権者は、金銭債権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者と、債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者である。
※仮執行の宣言を付した判決を有する金銭債権の債権者は強制執行を開始できる要件を備えているのであれば、財産開始手続の申し立てをすることができる。
→要件は下記である。
①申立権者が過去6ヶ月以内になされた強制執行又は担保権の実行での配当手続で完全な弁済を得られなかったとき
②債権者が存在を把握している債務者の財産に対する強制執行をしても完全な弁済を得られないことの疎明があったとき

→執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行の申し立てをしようとする債権者については、強制執行に一般的な開始要件を充足している必要がある。
→債務者が財産開示期日において自らの財産について陳述をした場合、債務者のプライバシー保護、債務者に圧力をかけるための濫用の防止等のために、原則として三年以内に再度財産開示手続をすることはできない。
→もっとも以下の場合は三年以内でも再実施することができる。
①債務者が当該財産開示期日において一部の財産を開示しなかったとき
②債務者が当該財産開示期日の後に新たに財産を取得したとき
③当該財産開示期日の後に債務者と使用者との雇用関係が終了したとき

→債権者の申し立てによって執行裁判所が財産開示手続実施決定をすると、期日指定と債権者・債務者の呼び出しがされる。債務者に法定代理人がある場合は法定代理人、債務者が法人である場合にあってはその代表者の呼び出しがされる。
→執行裁判所は申立人が出頭しないときでも、財産開示期日における手続を実施することができる。
→財産開示期日における手続は非公開である。

不服申し立てなど
→財産開示手続の申し立てについての裁判に対しては執行抗告をすることができる。
→財産開示手続の決定は確定しなければ効力は生じない。

三者からの情報取得
→債権者の自力による調査、債務者による財産開示だけでは執行に結び付く有益な情報を得ることが難しいため、債権者の申し立てにより債務者の不動産、給与、預貯金に関する情報提供を、執行裁判所が第三者に命令する制度が創設された。

→第三者とは以下である。

①債務者の不動産に係る情報については登記所

②債務者の給与債権に係る情報については市町村、日本年金機構

③債務者の預貯金債権等に係る情報については銀行など

 

→第三者からの情報取得手続については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所、この普通裁判籍がないときは、情報の提供を命じられるべき者の所在地を管轄する地方裁判所が執行裁判所として管轄する。

 

不動産に関する情報の取得

→次の者は債務者が所有権名義人となっている不動産について、強制執行又は担保権実行を申し立てるために必要な事項の情報を提供するよう登記所に命じることを執行裁判所に対して申し立てることができる。なお、財産開示手続と同様である。

①金銭債権について、執行力のある債務名義の正本を有する債権者

②債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債務者

 

→要件は財産開始手続の場合と同様である。執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行の申し立てをしようとする債権者については強制執行に一般的な開始要件を充足している必要がある。

 

財産開始手続の前置

→債権者は、不動産情報提供の申し立てに先行して、まず財産開示を申し立てなければならない。

→開示手続が実施された場合に、その実施期日から三年以内に限って不動産情報提供の申し立てができる。三年以内であれば申し立ての回数に制限はない。

 

情報提供の決定

→申し立てが要件を満たす場合は、執行裁判所は、法務省令で定める登記所に対して、債務者が所有権の登記名義人である土地又は建物その他これらに準ずるものとして法務省令で定めるものに対する強制執行又は担保権の実行の申し立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるものについて、情報の提供をすべき旨を命ずる。

 

送達

→債務者の不動産に係る情報の取得の申し立てを認容する決定がされたとき、当該決定を債務者に送達しなければならない。

→一般の先取特権者の申し立てによるときは、当該決定及び一般の先取特権を有することを証する文書の写しを債務者に送達しなければならない。

 

不服申し立てなど

→債務者の不動産に係る情報の取得の申し立てについての裁判に対しては執行抗告をすることができる。

→債務者の不動産に係る情報の申し立てを認容する決定は、確定しなければ効力を生じない。

 

債務者の給付債権に係る情報の取得

→以下の者は債務者の勤務先が分からないため給与債権を差押えることができない事態に対処するため、執行裁判所に対して申し立てることができる。

①扶養義務に係る定期金債権を有する債務名義を有する債権者

②人の生命身体の侵害による損害賠償請求権を有する債務名義をもつ債権者

→給与債権に関する情報を提供するのは、市町村や厚生年金保険などの実施機関である日本年金機構など

→債務者の不動産に係る情報の取得の手続な準用として財産開始手続の前置、送達、不服申し立て等がある。

 

預貯金債権等に係る情報の取得

→申立権者及び要件は財産開始手続の場合た同様である。

→なお、預貯金債権等に関する情報の取得の申し立てを却下する裁判に対しては執行抗告をすることができる。