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【民事執行法】不動産執行と債権執行

 

不動産売却の実施手続
→不動産売却の準備が整い、売却条件が定められると売却が実施される。
①売却の実施方法の決定
→不動産の売却は裁判所書記官の定める方法で行われる。
→競り売り、期日入札、期間入札
②売却の実施
→不動産の買い受けをしようとする者は執行裁判所が定める額及び方法による保証金を提供しなくてはならない。
→保証金の額は売却基準価額の二割が原則である。
→保証金は買い受け後に代金に充当される。買い受けに成功しなかった場合は買い受け希望者に返還される。
→なお、買い受け人になったにもかかわらず代金を納付しない場合は売却許可決定はその効力を失い、買い受け人は保証金の返還を請求できなくなる。
③売却許可決定
→執行官による売却の実施後、執行裁判所は、売却決定期日を開き、売却の許可又は不許可を言い渡す。
→売却の許可決定にせよ、不許可の決定にせよ、執行抗告をすることができる。
→強制競売で数個の不動産を売却し、その一つで各債権者の債権額及び執行費用の全部を弁済できる見込みがある場合は、執行裁判所は他の不動産について売却許可決定を留保しなくてはならない。
④代金納付
→売却許可決定が確定した場合は、買受人は裁判所書記官の定める期限までに代金を裁判所書記官に納付しなければならない。
→保証金は買い受け後に代金に充当される。
→買受人になったにもかかわらず代金を納付しない場合は売却許可決定はその効力を失い、買受人は保証金の返還を請求できなくなる。
→買受人は代金納付の時に不動産を取得する。
裁判所書記官は買受人のために、所有権移転登記、削除になった権利の登記の抹消、差押えや仮差押えの登記の抹消などを職権で嘱託する。
→買受人が代金を納付しない場合は、次順位買受人が売却許可を申し出ることができる。
→なお、上記の申し出がない場合、又はこの者に不許可決定が確定した場合は、裁判所は職権で再売却を行う。当事者に再売却の申立権はない。
→買受人及び買受人から当該不動産の上に抵当権の設定を受けようとする者が、代金の納付の時までに申し出たときは、登記の嘱託は、登記の申請の代理を業とすることができる者で申出人が指定するものに嘱託情報を提供して登記所に提供させる方法によってしなくてはならない。すると嘱託情報の提供を受けた者の申請により、所有権移転登記と連件での所有権移転登記をすることができる。


売却のための保全処分など
→執行裁判所は、債務者又は不動産の占有者が価格減少行為をするときは保全処分又は公示保全処分を命ずることができる。
→強制競売の開始決定の前にはすることができない。
保全処分ができる期間は差押権者は執行開始から代金納付までにすることができる。最高価格買受申出人又は買受人は買い受けの申し出から引渡命令の執行までの間にすることができる。

【用語 公示保全処分】
執行官に、当該保全処分の内容を、不動産の所在する場所に公示書その他の標識を掲示する方法により公示させることを内容とする保全処分。

引渡命令
→執行裁判所は代金を納付した買受人の申し立てにより、債務者又は不動産の占有者に対して不動産を買受人に引き渡すべきことを命ずることができる。これを引渡命令という。
→引渡命令は買受人が自己の取得した不動産を債務者、その承継人、権限なく占有している第三者に対して自己に引き渡すよう命ずる決定で債務名義となる。
→この申し立てに対する裁判は執行抗告をすることができる。


配当等
→買受人が代金を納付すると、最後の段階である債権者が満足を受ける段階となる。
→その手続には配当表に基づく配当と、売却代金の交付計算書による弁済金の交付がある。
→売却代金の配当と弁済金の交付を併せて配当等という。

弁済金の交付
→債権者が一人である場合や債権者が二人以上であっても売却代金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる場合は、執行裁判所は売却代金の交付計算書を作成して、債権者に弁済金を交付し、剰余金は債務者に交付する。

配当の実施
→債務者が二人以上で売却代金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができない場合は執行裁判所は配当表に基づいて配当を実施しなくてはならない。

配当を受けることができる債権者
①差押債権者
→配当要求の終期までに強制競売又は一般の先取特権の実行として競売の申し立てをして開始決定を受けた債権者は配当等を受けるために自ら強制競売等を申し立てているので配当等を受けることができる。

②配当要求の終期までに配当要求をした債権者
→執行力のある債務名義の正本を有する債権者
→差押えの登記後に登記された仮差押債権者
民事執行法181条1項各号に掲げる文書により一般の先取特権を有することを証した債権者

③差押えの登記前に登記された仮差押債権者
→仮差押えの執行は売却によって当然に効力を失うが、差押えの登記前に仮差押えの執行がなされていることは登記記録によって執行裁判所に明らかなため、配当要求をするまでもなく当然に配当等を受けることができる。

④差押えの登記前に登記された担保権者
→差押えの登記前に登記された先取特権、質権又は抵当権は売却により消滅するのが原則であるが、担保権の登記を経由していることは、登記記録によって執行裁判所に明らかなので自ら競売の申し立てや配当供給をするまでもなく、当然に配当等を受けることができる。
→配当の額は供託される。

配当表の作成
→配当表は裁判所書記官が配当期日に作成する。各債権者の債権の元本や利息等についての配当の順位と額は配当期日において、全債権者の合意がない限りは執行裁判所が実体法に基づいて定める。
→全債権者の合意があればその合意内容を配当表に記載し、そうでなければ執行裁判所が定めた内容を配当表に記載する。
→配当期日には、各債権者、債務者が呼び出され、必要な審尋や書証の取り調べをすることができる。

配当異議の申し出
→配当表に記載された各債権者の債権又は配当の額について不服のある債権者及び債務者配当期日において配当異議の申し出をすることができる。
→配当異議を完結させるためには次の訴えを一定期間にしないときは配当異議を取り下げたとみなされる。
①債権者
配当異議の訴えをする。
②債務者
相手方が債務名義をもっていれば請求異議の訴え、もっていなければ配当異議の訴えをする。

強制管理
→債務者所有の不動産から生じる果実の収取権を執行裁判所の選任する管理人に委ね、そこから得られた収益をもって債権の満足にあてる執行方法。
→強制管理は債権者の申し立てによって開始される。申し立てを受けた執行裁判所は強制管理の開始決定をするに際して不動産の差押えを宣言するとともに、債務者に対して収益処分の禁止、および債務者に給付をする義務を負う者に対して給付の目的物を管理人に交付することを命じる。
→給付義務者に対する開始決定の効力は、開始決定が当該給付義務者に送達されたときに生じる。
天然果実は差押えの効力発生後に収穫すべきものに限られるが、法定果実は差押えの効力発生後に弁済金が到来したものだけでなく、すでに弁済期が到来しているがまだ取り立てなどをしていない未払いなものを含む。
→執行裁判所は強制管理の開始決定と同時に管理人を選任しなければならない。管理人の資格に制限はなく、自然人のみならず、銀行や信託会社も管理人になることができる。
→管理人は不動産の管理・収益の収取や換価ができる。また、管理人は債務者の占有を解いて自らこれを占有することができる。
→ただし、不動産そのものを処分することはできない。

債権執行
→債務者が第三者に対して有する債権を差し押さえて行う強制執行である。
→債権執行は債権者の申し立てにより、執行裁判所の差押命令により開始する。
→債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が専属管轄を有する。
→執行裁判所は差押命令を発するに際して、債務者及び第三債務者に対する審尋をしない。
→差押命令は債務者及び第三債務者に送達され、差押えの効力は差押えの命令が第三債務者に送達されたきに生じる。
→なお、金銭債権に対する強制執行自体は執行裁判所の差押命令により開始する。
→差押債権者の申し立てがあるときは、裁判所書記官は差押命令を送達するに際して第三債務者に対して差押命令の送達の日から二週間以内に差押えに係る債権の存否その他一定の事項について陳述すべき旨を催告しなければならない。

債権差押えの効力
→執行裁判所は差押命令において、債務者に対して債権の取り立てその他の処分の禁止と第三債務者に対して債務者への弁済の禁止をしなければならない。
→上記の効力は差押命令が第三債務者に送達されたときに生じる。

差押の範囲
→執行債権の額が被差押債権の額を下回る場合でも、被差押債権の全部につき差押命令を発することができる。
→執行裁判所は被差押債権の額が執行債権と執行費用の合計額を越える場合は他の債権を差押えることはできない。

二重差押え
→すでに差押え又は仮差押えがなされている金銭債権に対してさらに差押えの申し立てがあった場合、執行裁判所は重ねて差押命令を発することができる。
→債権の一部が差押えられて、又は仮差押えの執行を受けた場合において、その残余の部分を超えて差押命令が発せられたときは各差押え又は仮差押えの執行の効力はさの債権の全部に及ぶ。

継続的給付の差押え
→給料その他継続的給付に係る債権に対する差押えの効力は、差押え債権者の債権及び執行費用の額を限度として、差押えの後に受けるべき給付に及ぶ。

扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例
強制執行を開始するには執行債権は原則として期限が到来している必要があるが、執行債権が以下の定期金債権である場合に、その一部に債務不履行があれば定期金債権のうち確定期限の到来していないものも執行債権として債権執行を開始することができる。
①夫婦間の協力義務や扶養義務
②婚姻費用の分担義務
③子の監護に関する義務
④親族間の扶養義務

→なお、この特例によって差押えることができる被差押債権は、その確定期限の到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付にかかる債権に限られる。
→給料などの継続的給付にかかる債権の差押えの範囲は原則たして4分の1までだが、扶養義務等に係る定期金債権では2分の1に拡張されている。また、金銭債権は直接強制により執行されるが間接強制でも使える。

差押禁止債権
→次の債権は4分の1までしか差押えることができない。
①債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
②給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
③退職手当及びその性質を有する給与に係る債権

→執行裁判所は、申し立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部もしくは一部を取り消し、又は差押えてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。
→これらの変更がされた後、事情の変更があったときら執行裁判所は申し立てによりさらにこの変更をかえることができる。
→差押禁止の範囲を変更することができるが、債務者がその制度を知らずに活用されなかっため、裁判所書記官は差押命令を送達するに際して債務者に差押命令の取り消しができる旨を教示しなければならない。

 

債権者の満足

①取り立て

→債務者の有する定期預金を差押えた債権者は差押えが債務者に送達された日から一週間を経過したときは、執行債権額及び執行費用の額の範囲で債務者の有する定期預金を取り立てることができる。

→なお、被差押債権が差押禁止債権である場合は一週間ではなく四週間となる。

 

②取立訴訟

→第三債務者が債権の取り立てに応じない場合は、差押債権者は第三債務者を被告として取立訴訟を提起することができる。

→ある債権者が金銭債権の一部を差押えた場合において、その残部の部分を超えて他の債権者が差押えをしたときは、いずれの差押債権者も取立訴訟を提起することができないわけではない。

 受訴裁判所は第三債務者の申し立てにより、他の債権者で訴状の送達の時までにその債権を差押えたものに対し、共同訴訟人として原告に参加するよう命じることができる。

 

③転付命令

→被差押債権を券面額で差押債権者に移転する命令のこと。譲渡制限特約付きの債権も対象たなる。

→転付命令は債務者及び第三債務者に送達され、それが確定すると、被差押債権が債務者から差押債権者に移転し、執行債権の弁済という効力が生じる。

→転付命令の第三債務者への送達前に、他の債権者が、差押えや仮差押えの執行、配当要求をした場合は転付命令な効力は生じない。

→差押命令及び転付命令が確定した場合においては、差押債権者の債権及び執行費用は転付命令に係る金銭債権が存在する限り、その券面額で転付命令が第三債務者に送達されたときに弁済されたものとみなされる。

→転付命令に係る債権が存在しなかったときは弁済の効力は生じない。一方、存在するのであれば実際の支払の有無にかかわらず弁済されたものとみなされる。

 

【コラム 供託】

第三債務者は差押えに係る金銭債権の金額に相当する金額を債務の履行地の供託所に供託することができる。

 

④配当

→債権執行において配当要求ができるのは、執行力のある債務名義の正本を有する債権者と文書で証明した先取特権者である。