例えば賃借人Aが賃貸人Bより、Bの所有物である家屋を借りていたとする。BがCに当該家屋をCに売却した場合、Cは所有権に基づきAに立ち退きを要求することができる。
Aのもつ賃借権は債権であるのに対してCのもつ所有権は物権であるので、後者の方が対抗上優越するのが原則である。これを「売買は賃貸借を破る」と言う。
ただ、これでは一般的に立場の弱い不動産賃借人を保護できないため、民法は登記がされた賃借権には、不動産の買い手やその他の第三者に対抗できるようにしている。これを「賃借権の物権化」という。
しかしながら、賃借権の物権化が可能であるといっても、債権である賃借権には登記請求権が保証されているわけではなく、賃貸人が協力的でなければ結局は意味をなさない。
そこで、民法の特別法である借地借家法により、たとえ登記がなくても、家屋の賃借または建物を所有するために土地を賃借するものには第三者対抗力が与えられている。
ところで、このような強力な原則修正規定は立場の弱い賃借人を保護するためであり、賃借権の更新も貸し手から更新拒絶をするためには正当な理由を要する。
ちなみに、借地や借家に賃借権を持つ者が、不法に当該不動産を選挙された場合、排除するには下記の手段が考えられる。
①賃借権が登記されていた場合は物権化された賃借権そのものより物権的妨害排除請求が可能。
②占有訴権を使って占有権を保全。
③賃貸人(所有権をもつ)の所有権に基づく物権的排除請求を代位行使。
※賃借権と登記請求権
基本的には物権には登記請求権があるが、債権にはない。したがって、裁判上の請求により登記請求に強制性がないのである。
その理由は、単に債権であるからと、売買契約などの物権変動においては、「変動を完了させて対抗要件まで備えさせる」ことまで要求されるのに対して、賃貸借は「きちんと使用収益させる」ことしか求められないからである。