法律系資格勉強アーカイブ★行政書士・司法書士

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【民法】失踪宣告の取り消しの効力

 失踪宣告が取り消されると、宣告後から取消までの期間に失踪宣告を受けていた者が死亡したとみなされることにより生じた財産上および身分上の変動が回復する。ただし、善意の者にはその限りではない。

 善意と判断されるためには当事者の双方が善意であることを有する。例えば財産上の変動として、失踪宣告された者を相続した者が、その相続した土地を第三者に売却としたとする。この場合、相続人と第三者が共に善意であれば、土地の所有権は失踪宣告されていた者へと回復復帰しない。ただし、その際は相続人は売却によって得た金銭で現存しているものを返却しなくてはならないだろう(現存利益)。なお、財産などが復帰的に変動した場合すなわち権利などをもとに戻さないといけない場合でも現存利益で足る。

 相続人もしくは第三者が悪意であれば原則論としては土地の所有権は失踪宣告を受けていた者に復帰する。しかし、問題なのは第三取得者がでてきたときである。

 相続人が悪意、譲受人が善意、転得者が善意の場合、判例は譲受人と転得者の間で善意であれば絶対的構成をとるとした。転得者の法益を保護するためにも、このような利益衡量が必要とされるのである。

 しかし、相続人が悪意、譲受人も悪意、転得者が善意の場合は、絶対的構成をとらないというのが判例である。

 失踪宣告の取消により効力を失い得るのは身分においてもそうであり、その典型が婚姻である。失踪宣告されていた者の配偶者が婚姻した場合、配偶者と相手方が共に善意である場合は後婚が有効で、どちらかが悪意の場合は重婚状態となる。すなわち、前婚においては離婚原因、後婚においては取消原因となる。

【憲法】公共の福祉と学説

 公共の福祉につき、3つの学説を説明する。

①一元的外在制約説

 この種の議論の最も古い学説であり、公共の福祉を理由に外的に制約が可能であると説明する、為政者にとって都合のよい説。

 12条や13条の文言を論拠とし、22条や29条は重視しない。

 容易に人権を制約されやすいという批判がある。

 

②内在・外在二元的制約説

 22条と29条を重視し、経済的権利や社会的権利には外在的制約を許容するが、それ以外は内在的制約となる説。

 12条と13条を重視していないため、包括的基本権に基づく新しい権利や側面により意味が異なる権利について説明できないという批判がある。

 

③一元的内在制約説 

 すべての権利は内在的に公共の福祉により調整されうるとする説。その程度や内容は状況や性質によるとされる。したがって、規制内容について曖昧であると批判がある。

 なお、学説上の通説ではある。

【民法】94条2項の類推適用

 たとえば、真の権利者はAであるが勝手に虚偽表示者BがA所有の所有権移転登記をしてしまい、それをもとに第三者のCに転売したとする。なお、AはBの行為を黙認しており、Cは善意だとする。

 この事例において通謀虚偽表示は成立しない。なぜなら、通謀がないためである。よって、94条2項が適用できないため、善意の第三者Cの保護(動的安全、取引の安全)がはかれないという問題が生じる。

 そこで、判例は権利外観法理を用いて、94条2項を類推解釈をした。類推解釈は法定のない状況で、似ている状況における条文を用いてする法的手法である。通謀がないので厳密には通謀虚偽表示の条文は直接的には使えないが、状況が似ているため、類推して適用するということである。

 類推解釈をする場合、法定されていないため、効果のための要件を裁判所が定義づけることになるわけだが、権利外観法理の成立につき

 ①虚偽の外観

 ②真の権利者の帰責性

 ③善意の第三者の信頼保護

を定めている。よって先述のケースでは、

①Bの虚偽表示の作出

②Aの黙認

③善意のCの取引の安全、のため、権利外観法理が成立する。

 したがって、この場合はCの法益が保護される。

 

 次の場合も考察していく。

 真の権利者A自らが勝手にA所有の不動産をBに所有権移転登記をした。Bはそれをいいこたに善意のCに転売した。

 権利外観法理による類推適用できるか考えると

①通謀はないがAによる虚偽の外観あり

②真の権利者自らが虚偽の外観を積極的に作出しているため帰責できる

③Cは善意であり、取引の安全がはかられるべきである。

 よって、94条2項の類推適用により、Cの法益が保護される。

 

 次からケースは応用編となる。

 AがBから不動産を購入するためにその予約をして、仮登記することを了承した。その後、Bは仮登記を勝手に本登記にして、善意の第三者のCに転売した。

 これについて考察すると、

①Bが勝手に仮登記を本登記にしたことが虚偽②仮登記を承諾したA

③善意である。

 この場合は真の権利者が積極的に虚偽の外観を作出したわけでも、虚偽表意を黙認したわけでもなく、帰責性は強くはない。ただ無権代理につき、権限ゆ越の表見代理に状況が似ていなくはない。Bは仮登記の権限を超えて本登記にまでやってしまったわけでわけだ。

 ちなみに、無権代理も本人は曲がりなりにも代理権を授与したことを帰責事由として、外観を信じて取引に入った善意無過失第三者を保護している。帰責性が低くとも多少はあるわけで、善意無過失というより厳格な要件を満たす第三者の取引の安全を保護している。

 本事例も権利外観法理における94条2項の類推適用だけでなく、110条権限外の表見代理の「法意」を理由に上記2つの併せ技で、善意無過失の第三者の保護を図っている。逆に言えば第三者が善意であるだけでは、今回の真の権利者の帰責性では保護されないのである。

 

 さらに最後のケース。

 AはBに不動産管理を任せていたが、Bに請われて印鑑や証明書などの重要書類をBに渡した。Bはそれを用いて虚偽の登記をつくりあげ、Cに転売した。

 この場合も

①虚偽の外観あり

②弱いが、AがBに書類を渡した落ち度あり

なので、権利外観法理による94条の類推適用と110条の「類推適用」で③善意無過失であればCは保護される。

 

 

【民法】権利外観法理

 その外形を信じて取引に入った第三者を保護する法理である。

 本来的に法は真の権利者を保護する(静的安全)。しかし、取引の度に真の権利者が誰であるかを調べるのは容易ではないため、一定の場合において、外形を信じて取引に入った第三者を保護する場合がある(動的安全)。これを取引の安全ともいう。

 典型例としては94条2項の類推適用の論点がある。通謀のない虚偽の場合は、94条2項を直接的に適用できないが、通謀虚偽表示に類似する場合だとして本条を適用するのである。なお、類推適用とは「法定されていない場合において、類似している場合の法定を類推して適用する論理解釈のこと」である。

 類推解釈である以上、裁判所がその要件効果を明示しなくてはならないが、その要件を下記

する。

 ①虚偽の外観の存在

 ②真の権利者の帰責性

 ③第三者の信頼の保護

以上を要件として権利外観法理とし、類推解釈が成立する。

 先述の場合だと、①通謀はないが虚偽表示の存在②黙認や積極的な作出、その他の落ち度なと、真の権利者の帰責性③第三者の善意(場合によっては無過失)による保護の必要性、などと要件をあてはめていける。

 権利外観法理の他の例をあげると、無権代理である。その趣旨は「一定の虚偽の代理権を表示されたことにより取引に入った第三者を保護する」ことである。ちなみに、代理権を実際に授与していないのにしたような表示、授与権限の逸脱、かつて代理権を授与されていた、などの無権代理の類型がある。さらに蛇足だが、代理権の授与は観念の通知であり意思表示を要素としない準法律行為である。

 無権代理を先述の判例上の要件にあてはめると①虚偽の表示(実際は授与していない、権限逸脱、かつての授与)②まがりにも代理権を授与したという本人の帰責性③善意無過失の第三者の保護の必要性、となる。

 他にも、名板貸しの責任や表見支配人、表見代表取締役などの商法や会社法における権利外観法理の適用も散見される。

 

【民法】法人について③

 


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 【自然人と法人】

 自然人は生まれながらに権利能力を有して、死亡によりそれが消滅する。なお、全部露出説をとる。したがって、原則的に胎児には権利能力はない。

 一方で法人は定款の範囲において権利義務の主体となる。もちろん、性質により享有できない権利もある。清算により権利能力を失う。

 【私法人と公法人】

 私法人は営利法人と非営利法人である。

 公法人は公庫や特殊法人独立行政法人のようなものである。

 【営利法人と非営利法人】

 営利法人はいわゆる会社であり、会社法に規定がある。株式会社、合同会社、合名会社、合資会社がある。有限無限の責任、直接間接の責任、税制などが違う。なお、株式会社以外を持分会社及び人的会社などと言ったりする。

 非営利法人は一般社団法人、財団法人、特定非営利活動法人公益法人がある。一般社団法人には理事をおき、社員に持ち分がある。特定非営利活動法人の代表例がNPOであり、公益法人の代表が医療法人、学校法人、宗教法人などであり、税制上の優遇がある。

 



【民法】制限行為能力者と受領や承認

 〈債務の承認と制限行為能力者

 消滅時効において、債務を承認すると時効は更新する。また、原則論として債務の承認は制限行為能力の影響を受けないものではある。

 しかし、未成年や成年被後見人についてはそもそも財産管理権そのものがないため、債務の承認ができないと解釈される。親権者や後見人は少なくとも財産管理をする権限を有する。

※親権者や成年被後見人は常に監護権と財産管理権をもつが、親権者において、審判にて財産管理権がない者がある。未成年後見人は親権者がいない場合だけでなく、このような場合でも審判される。

 ただ、被保佐人や被補助人については、本来的に自己の財産管理権をもっており、13条1項の行為でさえ、処分に保護者の同意がいるといえども、少なくとも管理はできる状態にあるのである。したがって、被保佐人や被補助人にした債務の承認は有効である。なお、被保佐人については判例も肯定している。

 

 〈準法律行為と制限行為能力者

 意思表示を基礎としている法的行為を法律行為と言い、意思表示を基礎としていない法的行為を準法律行為という。前者は契約や単独行為、合同行為である。後者は、代理権授与通知や債権譲渡通知などの観念の通知や、催告など意思の通知が代表的である。

 そもそも制限行為能力者のうち、未成年や成年被後見人は意思表示の受領能力はないとされる。したがって契約の申し込みがあっても、決して単独では承諾することができない。

 意思の通知である催告については、やはり未成年や成年被後見人には受領能力はない。したがって何ら法的効果はないのである。一方で、単独で不完全ながら受領能力のある被保佐人や被補助人に保護者の同意をもらうよう催告をすることは可能である。ただし、確答がない場合は制限行為能力者保護のため、追認拒絶したとみなされる。

【刑法】犯罪の成立まとめ

 犯罪とは「構成要件に該当し、違法かつ有責な行為」のことである。犯罪成立検討のための論理的プロセスを下記する。

 まず、検討は①構成要件該当性→②違法性の有無→③責任性の有無の順で検討する。

 ①構成要件該当性

 構成要件を細分化すると、

 〈客観的構成要件要素〉

 実行行為→結果→因果関係 で検討し

 〈主観的構成要件要素〉

 構成要件的故意 を最後に検討する。

 因果関係は関連条件(条件説)による「あれなければこれなし」を確認する。また、社会的に相当な因果関係であるか、及び現実の危険性を考慮していく(法的因果関係)。

 構成要件的故意は客観的構成要件要素における事実を認識及び認容しているかを確認する。

 ②違法性の有無

 構成要件とは違法かつ有責な行為を類型化したものであるため、構成要件に該当した行為は違法性が推定される。よって特別な事情があれば違法性が阻却される。違法性阻却事由は以下の通り

 〈正当行為〉

 法令行為、正当業務行為、被害者の承諾

 〈緊急行為〉

 正当防衛、緊急避難、自救行為

 ③有責性の有無

 違法性阻却事由がない場合、最後に有責性を検討する。刑法は責任主義をとり、非難可能性があるかどうかを確認する。ない場合は犯罪不成立となる。以下を検討する。

 〈責任能力

 責任無能力者は非難することができない。

 刑事未成年、心身喪失者は罰することができない。また、心身耗弱者のした行為につき、刑を減軽する(必要的減軽)。

 〈責任故意又は責任過失〉

 責任故意は、違法性阻却事由を基礎づける事実の不認識及び違法性の認識の可能性がある場合により、それがあるとされる。

 〈期待可能性〉

 適法な行為を選択できる可能性のこと。現状、判例で認められたことはないが、理論上超法規的措置をすることができる場合があるとされる。

 

 上記のすべてを通すと犯罪は成立するのである。